頑是ない歌
思へば遠くきたもんだ
十二の冬のあの夕べ
港の空になり響いた
汽笛の湯気は今いづこ
雲の空いたに月はゐて
それな汽笛を耳にすると
竦然(しょうぜん)として身をすくめ
月はその時空にゐた
それから何年経つたことか
汽笛の湯気に茫然と
眼で追ひかなしくなつてゐた
あの頃の俺はいまいづこ
今では女房子供持ち
思へば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど
生きてゆくのであらうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこひしゆうては
なんだか自信がもてないよ
さりとていきてゆく限り
結局我ン張る僕の性質(さが)
と思へばなんだか我ながら
いたはしいよなものですよ
考へてみればそれはまあ
結局我ン張るものだとして
昔恋しい時もあり そして
どうにかやつてはゆくのでせう
考へてみれば簡単だ
畢竟意志の問題だ
なんとかやるより仕方ない
やりさへすればよいのだと
思ふけれどもそれもそれ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気や今いづこ
リフレインの響きが美しく、声に出して読めばいつの間にか暗唱してしまいそうな、いかにも中原中也らしいわかりやすい詩である。
なお、竦然とは「怖れてぞっとするさま」のことという。
そう来月は私も65歳、年金の手続きで今月中に手続きをしい関係するところに手続きに行かなくてはいけない。それはそうと、「思へば遠く来たもんだ」はここ十年あまり、いつも口に出てくるリフレインである。
歌謡曲の世界でもこのような感慨が流されているのを聞いたような気もする。
このような句が頭に浮かぶときは、45年来の友人の顔を思い浮かべ、死んだ友人の目の輝きを思い出すのがいい。
思へば遠くきたもんだ
十二の冬のあの夕べ
港の空になり響いた
汽笛の湯気は今いづこ
雲の空いたに月はゐて
それな汽笛を耳にすると
竦然(しょうぜん)として身をすくめ
月はその時空にゐた
それから何年経つたことか
汽笛の湯気に茫然と
眼で追ひかなしくなつてゐた
あの頃の俺はいまいづこ
今では女房子供持ち
思へば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど
生きてゆくのであらうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこひしゆうては
なんだか自信がもてないよ
さりとていきてゆく限り
結局我ン張る僕の性質(さが)
と思へばなんだか我ながら
いたはしいよなものですよ
考へてみればそれはまあ
結局我ン張るものだとして
昔恋しい時もあり そして
どうにかやつてはゆくのでせう
考へてみれば簡単だ
畢竟意志の問題だ
なんとかやるより仕方ない
やりさへすればよいのだと
思ふけれどもそれもそれ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気や今いづこ
リフレインの響きが美しく、声に出して読めばいつの間にか暗唱してしまいそうな、いかにも中原中也らしいわかりやすい詩である。
なお、竦然とは「怖れてぞっとするさま」のことという。
そう来月は私も65歳、年金の手続きで今月中に手続きをしい関係するところに手続きに行かなくてはいけない。それはそうと、「思へば遠く来たもんだ」はここ十年あまり、いつも口に出てくるリフレインである。
歌謡曲の世界でもこのような感慨が流されているのを聞いたような気もする。
このような句が頭に浮かぶときは、45年来の友人の顔を思い浮かべ、死んだ友人の目の輝きを思い出すのがいい。