
本日「ボストン美術館の至宝展」で見たジョージア・オキーフ(1887-1986)の「グレーの上のカラー・リリー」(1928)。オキーフの名は知っていたが、具体的な作品は記憶になかった。あるいはどこかの印刷物でこの絵を見たことはあったかもしれない。しかし実際の作品を見て、とてもドキリとした。
水墨画のような背景に淡く着色した緑と白が静かに、控え目に浮き出ていた。41歳の作品だから中期の作品なのだろうか。具象画というよりもどこか抽象画のような感じもした。そして何よりも性的なこだわりを背後に秘めているような印象も受けた。
背景はカーテンなのだろうか。カラーの茎ないし葉の緑が左側はグレーの布地に溶けてしまうように薄く消えていく。白い花の部分は周囲に対して融け込むようなことはなく、しっかりと存在感を示している。この緑色の周囲の空気や背景に融け込むようなイメージは何を象徴しているのだろうか。白い花を引き立てるためだけの処理とは思えない。
もうひとつの気になったことは、水平・垂直の線がどこかで否定されて斜めに空間を構成している。それでいて白い花の部分は安定して自己主張している。不思議な空間構成である。
またカーテン乃至布地と花弁と蘂には影が微かにある。しかし茎・葉には影がない。生殖器としての花とそれを囲む布地には存在感があるが、茎・葉には存在感が希薄であるという所から、私は性的なものを感じたのだろうか。
この縦長の作品、とても気になり、そして惹かれた作品である。