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人生に乾杯! (2007/ハンガリー)(ガーボル・ロホニ) 85点

2009-07-30 13:56:21 | 映画遍歴
今や日本も外国も中心は年金世代、ということなのだろうか、ハンガリー版「俺たちに明日はない」だ。シニカルで、ぞくっとしそれでいて愛らしい。忘れられない映画となろう。

冒頭の二人の出会いが素晴しい名シーンだ。ブルジョア家が共産主義化させられ私物を没収させられる一瞬の時が二人の長い愛を育むことになる。セリフもなしでそれはそれは美しい。秀作たる導入部だ。

年金だけでは生活が苦しくなる一方というのは今や日本でも現実になってきている。日本では年金世代より若い世代の生活苦が問題視されているが、人数と口数の多さでは老人が勝っている。映画館で見ている老人たちもこの映画を切実なものとしてではなく、現代版青春映画として余裕のある鑑賞眼で捉えているような気がする。ハンガリーは知らないが、日本では一方ではカネをしこたま持っている裕福層でもあるのだ。

さて、そんな羨望めいた僕のよこしまな考え方は置いといて、この映画は蟹工船族の僕が見ていてもじゅうぶん青春映画している。老妻が借金の肩代わりに取られそうになる夫の愛車チャイカの代わりにダイヤのイヤリングを手渡す。それを見て80歳の老夫は若人よろしくぶっ切れてしまうのだ。

しかし、30年ほど冷えていた夫婦関係もこれっを契機によりを戻すというおまけもついてくる。こんな回春方法もあったんだね。立派に青春してるよ。

そしてあとは独り強盗からおしどり強盗へと代わっていく。残り少ない人生のときを短い時間で取り戻していくように、、。夫婦の冷戦期の原因でもあった30年前に亡くなった息子の墓参りをして、さて、後思い残すことは海を見ることだけだ。(トリュフォーの『大人は分かってくれない』のラストシーンも海のシーンだったなあ。)そして愛車チャイカに二人乗って死のダイビングへと突き進んでゆく、、。

と、誰もがこう予測した。目撃した。でも映画は意外な方向へと逸れて行ってしまう。

ここから超ネタバレです。

このラストはちょっと僕も合点がいかないが、(というのも燃え尽きた車でも骨ぐらいは確認するでしょう。)まあ、したたかな西洋人の老夫婦だったらああなるかな。いつまでも日本人も『東京物語』の老夫婦でもないだろうから、、。

この映画、好きです。大好きです。僕の心にずきっと、またじんわりと沁みて来ます。これが本当の青春映画なのでしょう。

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