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セント・アンナの奇跡 (2008/米)(スパイク・リー) 75点

2009-07-29 14:38:45 | 映画遍歴
1944年度のイタリアの政治状況が脳裡をめぐるが、日本人である僕には(というか、単なる勉強不足なんだが)はっきり掴めず(まだムッソリーニが生きているはずだなあ、なんて考えたり、、)目の前の状況をまず整理するのに時間がかかってしまった。

と、映像はアメリカとはいえ黒人であるから白人のために前線に送られてきた、ボンクラ白人上官に支配されるアメリカ軍を映し出している。戦闘下にあっても黒人と話すことすら嫌がる上官。口答えできずにこんな間抜けな上官の下では死も近いなあと諦観する黒人兵たち。そこらの戦争映画ではない出だしで秀逸。

案の定、馬鹿な上官のために、そして子供を救おうとした巨体兵のためはぐれてしまった4人の黒人兵たちの風光明媚トスカーナの日々が始まる。

そうなんだ、パルチザンが山に隠れている激動期だ。黒人兵たちは本国では味わえない人種差別のない扱いをトスカーナの村人たちに感じている。戦時中で危険極まりない状況なのだけれどまともに人間扱いされている。ふと感じるある意味では、の平和感。

しかし映像はそんなのどかなトスカーナを、われわれにナチスによるセントアンナ教会大虐殺に強引に導いてしまう。聖職者も、女子供もお構いなしの、この世のものとも思えぬ地獄の銃弾が鳴り響く。目を覆いたくなるほどの虐殺は一瞬、神の不在を訴えているようだ。

日本人にとってトスカーナ地方は観光で有名なところだけれど、こんな悲劇があったんですね。考えたら日本人は敵国上陸の前に無条件降伏をしているので、(沖縄は除くが)現地戦は経験しなかったわけだ。(勿論原爆などの空爆は受けているけれども、、)改めて戦争の悲惨さ、理不尽さを思う。

でもこの映画、冒頭アメリカ兵の内部でも白人黒人の対立を描いているが、驚くべきはパルチザンでも密告者がおり、それが教会大虐殺を引き起こしたことになっている。うーん、政治的には波紋を投げかけるだろうなあ。でも、【リー】の立ち位置はアメリカ兵でもそれぞれ反目のあったのは周知のこと、またナチスドイツの中でも人間としてナチスの背いて子供たちを助けた人もいたというヒューマンな直立視点にあるのだ。

ましてや、パルチザンだって何が原因かは分からないが、裏切り者がいてもおかしくはない、という立脚点なのだろう。でも、ちょっと理屈過ぎるかなあと言った感もないではないが、、。

あの、平和で、全員が明朗で人のいいトスカーナの村人が地上戦に巻き込まれて(というよりまさに殺戮のための殺戮とも思える戦闘戦だが、、)ほとんど亡くなってしまったというのは衝撃的で耐えられない。唖然とする。

戦争許すまじ、現代人であるわれわれは常に脳裡にインプットしておかねばならないと思う。力作です。演出的にはちょっと流れるような部分もあったけれど、いい映画を見た記憶はずっと残るだろう、。

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