まずこの大仰な題名に少々引いてしまう。でもそれはラストのラストで明かされる。ふむふむなるほど面白かった。
そして見ていてすぐイザベル・コヘット「死ぬまでにしたい10のこと」の日本版だと思った。ただし、カラーはこちらの方があくまで明るいし、強い。その差はあれど、人が死期を悟ったとき、それでもこれからどう生きてゆくのか、考えさせられる秀作であった。
今や珍しい銭湯がこの映画の舞台なんですね。ただし、この銭湯はボイラーとかでなく、昔ながらの薪で沸かす方式である。そのためか、煙突のイメージが何となく葬儀場の煙突とダブってくる。頑張り屋の女主人公の人生をオーバーラップさせている。
彼女が死ぬまでに解決しなければならない問題点は次々と出現するが、体調が悪いにもかかわらず彼女は日夜邁進する。彼女の体力の落ちてゆくさまも自然体に描かれているから、決して超人的でもない。的確な演技。やはり宮沢えりはすごい。
今回は旦那役のオダギリジョーもいい。こういう自己主張の少ない柔らかな役柄が得意なのかな。本領を発揮する。もちろんあの3人のお子様たちも絶品ですよ。素晴らしい。
2か月で、ほとんど解決した彼女。残りは自分の母親探しである。自分の経験から2人も同類を抱え込むことになった因縁の元。しかし、すべてパーフェクトにしなかったことが逆にこの作品の質を高めている。人に幸せを与える人はその分自分を犠牲にしなければならないのか。彼女の人生の最後の爆発は実母めがけて硝子戸を砕く、、。
死ぬまでにしたいこと。さて、それがわたしたちに託された命題だったら自分だったらどうするか。そんなことを帰り道、幸せそうに通りゆく人々の表情を見ながら、ぼんやりと考える。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます