オリヴェイラにしては長い上映時間。(とは言っても90分だが)彼の最近の映画は悪(意)が薄れて来ている、と思う(これはハネケもまた同じ)。人間、年を重ねると人生が透いて見えて来るのだろうか、、。
そして今回はまさにレンブラントの「放蕩息子の帰還」風でもある。90分全編、「光と影」。まさにろうそくの光で室内を映したような映像はレンブラントである。そしてこの映画は寓話でもあるのだ。
嫁を入れると4人家族の話である。家族は息子の帰還をただただ生きる希望としてその日を生きている。
作品では締観という人生への絶望を描いているわけではない。家族を通してむしろかすかな生きる希望を描いているように見える。ろうそくの光も時々揺れ動くが、しかし風が去れば一条の長い光へと戻っていく。
それは家族だからこそ成せる業である。そこには一個の静謐な庶民の人生がある。平凡な人生にこそ本来の幸せというものがある。そのために家族が家族のために犠牲を強いるのは致し方ないことなのだ。
絵画を90分見ていたら映画が終わったという感じだった。そう、この映画は珍しい絵画鑑賞映画ではないかと思う。
そういう意味では途中出て来るジャンヌ・モローとルイス・ミゲル・シントラは不必要だ。特にジャンヌ・モローは彼女の存在がこの映画の在り方を危うくする。彼女を出演させるならもっと気の利いた(意味のある)セリフがなければだめだと思う。
でも105歳の映画監督。人類未踏の挑戦だなあ、、。映像は衰えてはいない。
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