セントの映画・小演劇 150本

観賞数 2024年 映画 96本、 演劇 72本

沈黙 -サイレンス- (2017/米)(マーティン・スコセッシ) 85点

2017-01-23 22:10:35 | 映画遍歴

思ったより原作にほぽ忠実で抑制の効いた「沈黙」であった。殉教のむごさ、神の不在(沈黙)を正攻法で描き切った。スコセッシ見事である。

「沈黙」といえばベルイマンにも同テーマの問題作がある。50年以上たってもまだ問題作である。それほど、神の不在を強く訴えると、いろいろあらゆる方面から問題視されるのである。

この映画、殉教のシーンなど、けれど恐ろしいほど静かである。激しくない。そこに神の目線を感じる人がいるのかもしれない。篠田作品ではもっと激しかったかなあという印象を持っている。スコセッシは西洋人だからか、神の存在を常に考えているようである。

神は声だけで登場する。ロドリゴが神の不在を問うとき、「私も懊悩していた」など言います。これは原作通りですが、あのラストの棺桶に忍ばせていた「あのもの」は原作にあったのかどうか覚えていません。

恐らくスコセッシがこの作品で初めて自分を露出した部分だったのではないか、そんな気がします。棄教して日本人になり下がりながら、民衆から転びバテレンとののしられながらも、決して主を捨て去ることなく一緒に生きていたのです。

私はこのラストにすこぶる感動しました。この作品は全体的に優しい映画なのです。映像も敢えて静かに撮った意味が分かります。

でも、何とも西洋的な解釈でもありますね。原作とこの部分が違っていたらどうなんだろうと思ってしまいます。主を見限ったロドリゴの方が人間的で、われわれ卑近な人間には理解しやすいです。

演技的には、僕は、ユダ役であり、ごく普通の日本人(いわゆる私たち)を演じ切った窪塚洋介を認めるも、モキチ役の塚本晋也に何とも言えぬ純真な人間像を見出しました。信仰に殉じる人間の大きさとでも言おうか、素晴らしかったです。

また、ほとんどセリフなしで、あんな殺され方をした加瀬亮に俳優の強い思いを感じました。そして何といっても憎まれ役の奉行のイッセー尾形のりりしさ。凄かったです。「太陽」以来の名演技ですね。

キリストの殉教とロドリゴの転びを対比させながら、キリスト教の本質に迫る力作でした。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ステージタイガー「#ファイ... | トップ | マギーズ・プラン 幸せのあ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画遍歴」カテゴリの最新記事