なかなかの秀作。二組の夫婦の性格付け、心理状況が見事的確に描写される。骨髄移植のために元夫との駆け引きをしてまで娘を救おうとする母親と現夫との隠微な関係。元夫とスチュワーデスの妻との夫婦関係まで当然ながらぎすぎすしてくる。
この研ぎ澄まされた4人の心理劇はある意味ホラーとでも言うべきである。特に現夫が義理の娘のために仕事を内勤にしてまで尽くし、人工授精が失敗すると妻の肉体的提供まで看過し、もし妊娠した場合でも我が子のように大事に育てようと妻に提案するのである。この夫は以前妻が妊娠した時、不本意ながら我が子を中絶させられた哀れな夫でもあるのだ。
僕はこの4人の設定でこの夫が一番気になる。妻は夫を神様みたいな人というが、神様が実在するようなことがあるのだろうか、、。恐らく彼の脳裏は宇宙の果てのように暗黒漆黒ではなかろうか。妻の肉体的提供をふとしたことから聞いてしまう夫の心理は怖い。ましてやこの時ただのに肉体的提供だったはずのセックスは彼女に思いもかけない快楽を与えていたのである。
こういう人間の生の生理状況、感情を見るにつけ本当に人間という生きものは恐ろしいものだと思う。だいたい、一人の人間を助けるために血縁を作るなんてことが赦されるのだろうか。この映画では肝心のその部分は全くの不問である。バックには中国の少子化政策があるからだ。
冒頭の売れないアパートの不思議なベッド、またすぐ間違い通話をしてしまう携帯電話の使い方も道具として秀逸で感心した。本年選りすぐりの秀作であろうと思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます