何か不思議な映画なんですよね。音痴のソプラノ歌手のカーネギー公演を達成するまでの逸話なんですね。普通こういう話だったら結構退屈するはずなんだが、意外と最後まで一気に見てしまった。
それは、要するにこの作品の秀逸さを証明しているのだが、やはりそれには二人の名演もありますが、フリアーズの職人的な名演出に負うところが多いのは言うまでもないだろう。それほど素敵な映画でもあります。
しかしなんか不思議なんです。何か澱むところもあるのです。
それは最後の方でベッドに二人寝ているところの描写に現れています。夫の方は妻と共に寝ているのですが、身体は布団の上にあるのです。
夫が言っていたように彼ら夫婦は性的な結び付きがなかったのです。ハートだけであれほど人を愛することが出来ようか。ある意味異様な夫婦関係です。
梅毒が彼らを阻むんですね。肉体的に夫のことを理解している妻は夜は別居していて、愛人を容認する。こういう倒錯的な愛を彼ら夫婦は何十年過ごしていたわけです。
このことが映画を見終わって、ずっと澱んできてそれが残滓となって残ります。
この映画は二人の夫婦愛を謳っているのか、それとも彼らの倒錯的な愛を伝えているのか僕には分かりません。人間には本当にいろんな人がいるということです。でも分かっているのはあの二人がとても幸せだったということです。
うらやましい限りです。夫婦愛です。いい映画でした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます