セントの映画・小演劇 150本

観賞数 2024年 映画 92本、 演劇 70本

愛してる、愛してない (2001/韓国)(イ・ユンギ) 70点

2013-04-07 14:25:50 | 映画遍歴

冒頭の、車の運転席の二人の長いカットは、何気ない会話の積み重ねに急に別れを告げる女の重さに耐えきれなくなり、映像はファーストクレジットに急転。なかなか面白い新鮮な映像で気に入る。

ところが自分の家に戻り、くだくだどうでもいい日常的なセリフが蔓延し、そのうち映画としてはセリフはそれほど重要でなく、その奥に潜む夫婦の重い残滓を観客は見つめていく作業を余儀なくされる。どうも予算が潤沢でないのか、それ以降はセレブ夫婦の部屋しか映像は移動しない。閉塞感がみなぎる。

観客は壊れかけた夫婦の脳裏を探ることぐらいしか出来なくなるのだ。そしてネコの登場。また大きな声がし、全く関係のない夫婦の闖入。観客はやっと映像が変化しほっとするも、それもつかの間、相変わらず夫婦の脳裏を探らざるを得なくなる。

そして突然の電話。男の声だ。妻の不倫相手からだとすぐ分かる。夫は気づいているのに普通に受話器を妻に渡す。妻は夫が聞いているにもかかわらず男とどうでもいい会話をしている。夫にすまないという思いは感じていないみたいだ。観客はさらに苛立ってくる。

ようやく闖入者も帰り、夫婦も特に変わったこともなく料理を作り、そして映像は突然終わる。妻の「何とかなる」という言葉も当然意味を成さない。観客はけれど憤りもない。そんなものなのだろう。

ユンギはこういう即興的な映像を作ってみたかったんだろうなあ、、。その気持は分からないではない。でも、なにも映画でこれをやる必要があったのか。こんな即興劇であったら、テレビドラマで十分ではなかったか。そこそこの才能は感じるものの観客に何かを与える作品ではないように僕は思った。

前作『素晴らしい一日』がよかっただけに僕にとってはちょっと期待外れの作品になってしまった。次作に期待、というところか、、。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ザ・マスター (2012/米)(ポ... | トップ | ある海辺の詩人 -小さなヴェ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画遍歴」カテゴリの最新記事