文庫本で550ページの大作。奇抜な建築学の鬼才の館に招待された著名人が次々と殺されてゆく。ある意味館を密室に例えれば立派な密室殺人事件。しかも、それぞれが不可能殺人事件でもある。放浪の数学者十和田の推理が始まる、、。
うんちくが多い内容だが、例えばエラリー・クインとかヴァン・ダインのような理論的な会話を楽しめる代物でもない。かなり高尚な理論的な話を展開しているが、その実、内容が甘い。軽い。ミステリーだからって、やはり人間が十分書けていないと魅力がないのではないか。
とはいうものの、この作家の目指すところは孤高であり、神々しいまでに大きい。それほど立派である。これほど大きな壁に挑戦しようとしたミステリーにはやはり一目を置かざるを得ない。他の作家にはない何かが存在する。
ラストに向けた解答編はただ驚くばかりだが、でもどう考えても実現不可能のような気がしてならない。それでも斬新ずぎて、ニヤニヤさせられるところが多い。面白い。ここまで大胆だともう素直に頷いてしまうのだ。
でもこれが処女作だというから、その可能性に拍手を送ろうではないか。
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