さすが荒井と思わせる秀逸な脚本。無駄がない。しかも緊張の糸が最後まで切れない。安心して見ることのできる日本映画だ。しっかりと子供目線が主軸となるところがいい。我らが生きるこの国は子供たちが将来を決めるのだ。
地味なテーマなんですな。再婚同士の家族の物語。新しい3人目の子供が出来て、そこで一挙に今までのほころびが露出する。じっくりと現代の日本家庭を掘り下げてゆく演出。
この作品は切り捨てられようとする人たちの話でもある。
リストラという手段で社会から切り捨てられようとする夫。その夫から、身ごもった子供を堕ろして離婚してくれと突然切り出される妻。そして新しい子供ができることにより現在の父親から捨てられるのではないか、と懊悩する小6の女の子。そんな物語であります。
そしてこれらすべては、しつこく繰り返し出現するあの駅の「斜行エレベーター」が象徴しているんですなあ。うまい。このカットも素敵でした。真上には決して動かないエレベーター。人の心の危うさを内包し、緩やかに斜めに動くエレベーター。人はじっとこらえるしかない。絶品でした。
僕は浅野が実子の育て親の病室で、子供を大事に育ててくれたことへの感謝を述べるシーンで感動する。これぞ親の心根です。それがよく出ています。
テーマとしては実に地味な作品ですが、日本映画のいい所が随所に散りばめられています。拾い物の映画です。
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