青春とはなんて、もう気恥ずかしくて言うことがおこがましくなって来てはいるが、それでもこの映画はまさしく現代の青春を見事切り取ることに成功している。
男2人に女1人で紡ぎ合うあの世界は、まさしく青春の真っただ中にいる者たちだけが受容することのできる甘美でしかし暗鬱な時間の積み重ねである。今まで、数々の名画の題材になった所以でもある。
函館という暗い町並みが彼らの心象風景を表わしている。どこか置いとけぼりになったような街並み。ゆっくり走る市電。それらに溶け込んでいるかのような彼ら。お金も、仕事も、明るいミライもあるわけではない。だから刹那だけを求めて夜を彷徨う。明日が来るのが恐いのである。
けれどそんな3人にもいつか別れの時が来る。
全体に照明を落とした映像に現代の若者の、声にも出せないうごめきと哀しみ、そしてそれでも生きてゆくしかない心情が投影される。佐藤泰志の原作は誰が監督をしても、人の心を捉えて離さない質感の近い作品が多いです。不思議です。
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