学生演劇では登場人物も多く、学生運動とはいえ、青春の虚像・実像をテーマとする劇なので上演しやすいんだろうと思う。50年ほど前の若者をストレートに理解するには今の学生はマシュマロ過ぎるが、それでも自分と同年代の若者の生き方には興味があるのだろうと思う。
年齢の幅がある配役なのに、同一年齢の俳優が取り組む、そのギャップはそのうち気にならなくなる。俳優たちは無理に白髪にすることもなく年配者になり切っている。セリフも最初は固くやはり学生演劇なんだよなと思ったが、これもそのうち気にならなくなる。勢いがあるのだ。
2時間半の劇である。学生運動をやっている人たちも住んでいるアパート。彼らの生態を彼らの青春とドッキングさせ、当時の青春の光と影を、面白おかしく、むしろエンタメを活用しダイナミックに描いてゆく。
2時間半を全く長く感じさせないのは、良く作られた脚本に尽きるのであろうが、彼ら演劇専攻生は50年ほど前の学生の気持ちに少しでも触れようと努力している。当時の年代であった吾輩が言うのであるからこれは間違いない。少なくとも理解しようとしているのは分かった。
そのため、難しい政治闘争セリフもポンポン出てくるのであるが、逆に彼らのセリフから当時が懐かしく思われて仕方なかった。まさにノスタルジーなのである。そう、自己否定などみんな一通り、自分とは何かということを日常考えていたような気がする。
そういう馬鹿さ、真面目さなどが痛烈に現代に蘇る。
ラスト、まさに社会から逸脱できずに、ドーンと親のコネで社会に君臨している主人公。ほろ苦い青春を感じているのは彼だけでなく、当時怒涛の青春を過ごした人たちは主人公と同じ感覚を覚えたはず。泣かせるねえ。あの時代も確かに一個の青春があったのだ。
秀作です。
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