セントの映画・小演劇 150本

観賞数 2024年 映画 94本、 演劇 72本

スルース (2007/米)(ケネス・ブラナー) 75点

2008-04-16 14:30:45 | 映画遍歴
映画も舞台も超有名な秀作ミステリー劇の再映画化。そりゃあ、映画ファンはこの顔ぶれ、演出家、脚本家であったら即映画館に馳せ参じるはずの話題作であります。

M・ケインは若いときJ・ロウと同じく金髪美青年で、同じ英国人。35年前、かの名優ローレンス・オリビエ爵相手に「スルース探偵」をJ・ロウの役柄で出演している。M・ケインとJ・ロウは「アルフィー」で時を違えて同じく主演するなどまるで生まれ変わりのような俳優人生を送っている。確かに、J・ロウほどではないものの若いときのケインは女性にも超人気のあった俳優だ。

で、映画の方は前作と第2ラウンドまでは同一に進むが、第3ラウンドになって全く変えてしまっている。ここがこの作品の評価のキーポイントであるし、スタッフが一番気にもし、あるいは自信もあるところなのであろう。

この作品はミステリー仕立てではあるが、男二人の対話劇であり、主客転倒の切れの面白さを味わう心理劇なのであります。ミステリー作家として大御所の初老の男と、妻の愛人の若い男。さすがイギリスなんでしょうテニスのゲームをしているように攻撃、防御が繰り返される。

心理劇として面白いだけではなく、この映画はどんでん返しの連続が観客を釘付けにする。それは一つの台詞も見逃せなくなるぐらいなのである。しかし、第3ラウンドになって、僕はあっと心で叫んでしまった。新作はJ・ロウの美貌が老人の人生を狂わせるといった通俗的なものになっている。

前作は人生上の下積み層の若者が人生の成功者(オリビエなので余計そう思うところがあった。)をなぎり倒す瞬間の爽快感まで感じられたものだった。オリビエの醜悪さがとても印象に残り映画的にも素晴らしい余韻が残ったものだ。しかし、本作はJ・ロウの美貌は死んだ後でさえ美しく撮り(女性観客を意識しているのが明らかで、J・ロウに負っている)、ケインが男を愛してしまっていた、なんて陳腐なラストを見せつけられる。

映画の方は映像も俯瞰的に捉えてスタイリッシュな作りで秀逸。アメリカ映画とはいえ、実イギリス演劇界が腕を振るったかのような斬新さには目を見張りました。ただ、前作が良過ぎたんでしょう、第3ラウンドの脚本を変えたことが裏目に出たのでしょうか、ちょっと締まらなかったかなあ。でも、僕自身、長い映画ファンとして、こういう凝った映画を見せてもらいすこぶる満足です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ぼくたちと駐在さんの700... | トップ | ハーフェズ ペルシャの詩〈... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画遍歴」カテゴリの最新記事