目には目を歯には歯を、という復讐法に焦点を持ってきたのがまずこの小説の成功の秘訣だろう。このプロットはとても面白いし、そして否が応でも考えさせられる。つまり読者が他人事と言ってられない何かが、常に残滓となって自分に乗りかかって来るからである。
これをテーマに5編の短編。
すべて一気読み。読むのが厭でも、本を離せなくなるから不思議である。これは作者の力量がそうさせるのか、それともこの深淵たるテーマが我らを苦しめるのか定かではない。
5篇中でも、僕は第3章の「アンカー」に強く感銘を受ける。
死亡した女性教師から恋人にあてた手紙には号泣する始末。本でこういうことは僕は珍しい。第5章「ジャッジメント」の10歳の小学生の心情とともに、哀切の気持ちと愛のすばらしさを久々に味わう。
注目の秀作である。
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