もともと『ばかのハコ船』なんかを作っていた【山下敦弘】、最近はオーソドックスな巨匠に納まり始めているのを少々気にはしていたが、本来は市井の冴えないずっこけ人生はお得意のはず、という視線で見た。
原作は冒頭の朝のテント状態という描写が面白かったが、まあ確かに俗語をそのまま文章にしちゃう面白い小説を書く人だなあと思っていた。
そもそもこれだけの話をどう映画化するんだろうと心配もしたが、映画はさすが中卒(周囲より本人が気にしているらしい)の人間を取り巻く空気感が生き生きしており、僕は原作よりかなり面白くなったと思っている。
それはやはり【森山未來】のなりきり演技が秀逸であることの一言に尽きる。まさに人間の生の声を発している。底辺で社会を実は支えている彼ら若者の、少なくとも遠吠えはしかとキャッチ出来た。
俳優陣では【高良健吾】がやたらカッコよすぎなのがちょっと気になったが、まあ映画だから許しましょう。【マキタスポーツ】を通して語られる希望もやはりこの作品では重要だ。どんなに這いつくばっても人間は希望がなければ生きていけないのではないか、と思っている。 貫多もそのささやかな希望があったからこそ我が道を歩めたのではないのか。
まあ、これだけの短編を実にうまく料理してしまった【山下敦弘】の手腕を見る映画かなあ、、。でも、一方、もう山下は『ばかのハコ船』に戻る気のないことを確信しました。風格があります。
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