確かに熟成度が高い。もうあたりきりで使い古しの人形の家ノラが今回の主人公であります。卑近過ぎます。身につまされ過ぎます。いい加減見たくもない話です。でも、2時間きっちりと現代の寓話にしてしまう山田のしたたかさに僕らは唸るだけでいいのか、、。
自転車に乗っている夏川結衣は少しふっくら顔になってきています。もう若くはないです。ということはそれ以上に僕もずっと年を取ってきているんだなあと一瞬思う。山田の映画は見る方にも余裕が生まれている。不思議な映画作家である。
冒頭からのシーンから、今回のストーリーとラストのオチはみんな分かっている。山田と共有している。これが山田映画の策略であり、しかしそのワールドにずうーと浸っていたいと観客は思うのである。昔からの古き良き映画の伝統を山田も観客も引きずっているのである。安心感もあるのである。
それにしても、安全牌映画をかくも掘り下げ、一定以上の作品には決してならないことを理解しつつ、繰り返し作品を生み出す山田洋次。実にこのシリーズも作り込むごとに豊饒の香りを呈している。
ある意味、人間国宝的世界でもある。実に凄いことではないか。
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