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小菅 優 ベートーべン・ピアノソナタ全曲演奏会 第29番 「ハンマークラヴィア」(於・いずみホール)

2014-06-19 10:05:15 | 書きとめ日記

実は昨年あたりから年甲斐もなく放浪癖を増やし、コンサートに行くようになった。最初はワンコインコンサートと言って昼のクラシックコンサートにお邪魔していたぐらいだが、そのうちライブの音に馴染んできて、今では週1ペースで日参している状態である。

若い時にはピアノコンサートに行ってはいたが、何しろカネがない状況下でCDより高い金額を払う余裕は全くなかった。ピアノはむしろCDで部屋でじっくり聞いた方がいいぐらいに思っていた。当時はシンフォニーがあまり好きでなく、ピアノか弦楽四重奏程度の曲目を聴いていた。

実際コンサートに行き始めると、シンフォニーの楽団の一人一人の動き、音色、そして何より総勢で作る樂曲の素晴らしさに参ってしまい、今まであまり好きではなかったシンフォニーが今一番興味のあるところになってしまった。その不思議。

映画、演劇等はもう云十年も見ているのである程度の感想なりはこうしてブログで恥ずかしくも書き込んでいるが、音楽は感想すら書き得ない素人であります。で、僕のブログで音楽のことを書くことはなかったのですが、昨夜のピアノコンサートの素晴らしさをどうしても書きこんでおきたく筆を取った次第です。

小菅 優さんのピアノコンサートである。前回は有名な「悲愴」「熱情」であったが、実にダイナミックな演奏で感心した。そして今回の「ハンマークラヴィア」。これがすごいんです。演奏者泣かせの実に壁のような樂曲であるのは聞いていたが、まさにその通り。

まずピアノソナタにしては4楽章あり、演奏時間もゆうに40分を超える。厳しいのはそれだけではない。4楽章それぞれが壮大な構成の元、ピアノの鍵盤をすべて使用する。両手は常に右左交差する。しかも演奏は内面的な深さを常に要求される。

曲はショパンのような旋律もあれば、4楽章のフーガは完全にバッハである。ピアノソナタでここまで壮大な曲は僕は初めて聴いた。そしてベートーベンのことだから、シンフォニーの9番と同様、演奏者をメチャいじめてる。いわば、ベートーベンと演奏者との決闘のような樂曲なのである。

本当にこれを演奏したこと自体すごいのに、音楽の精神性をこれほど強く感じられたのもあまり経験のないことで驚く。小菅 優はまだ30歳ぐらいの若い女性である。日本人でこんな人がいるのだ。彼女のベートーベンのピアノソナタ全曲コンサートもいよいよ次回で最後である。今一番注目される演奏家である。


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