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ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (2008/米)(デヴィッド・フィンチャー) 80点

2009-02-13 09:59:19 | 映画遍歴
3時間弱の長尺だがまあ退屈せずに見られる。さすが、フィンチャーの新作。まともに演出するとこうなるんですな。映画を見ているだけでは彼の今までの毒性は出ていない。むしろ大河系名作に挑戦し演出だけでも相当だというアピールをしたかったのかなあ。

この映画の場合やはりブラッド・ピットの逆時間遡行経過、もうそれだけで80%ぐらいの見ものである。80歳の老衰状態での誕生から実年期、青年期、少年期、そして幼児期、赤ん坊と見せてくれます。その映画的工夫を見ているだけで通常の映画では味わえない見世物的好奇心が沸いてくる。

父親が老衰状態のわが息子の誕生を見て発作的に捨て猫のごとくすぐ捨ててしまうぐらい幼稚思考なのに、ブラピは幼い時から老成したかのような大人の風格を持ち合わせている。2ドルで乗船し初めて労働の喜びを感じる息子。自分の風貌、運命を見つめれば自然と人間は透いた人生観を持つことが出来るのか、この辺りの対照感は面白かった。

そしてこの映画のテーマ。自分は徐々に年若くなっていくのに対し、妻とわが子は逆に自然と老い始めていく通常の人生を送ることになる。その交差感のつらさ、わびしさ、その人生への投影感は映画ではブラピの行動で観客に表わされるわけだが、説明がほとんどなかった。しかし僕はこれで正解だと思う。

やはり本当の家族には愛しているからこそ重荷にならないよう、つらい人生を過ごさせない状況を設定したい、彼のぎりぎりの気持ちが僕には手に取るように十分理解出来る。だからこそ妻と娘も後年このことに感謝するのである。

一方、ブラピファンは彼の一生を映像で見ることが出来、本望ではないだろうか。特に20歳ぐらいの少年っぽい風貌は20年前に見事戻っている。新作で過去を蘇らせてしまうブラピ。現在45歳なんですよ。お化けだのう、、。

ブラピのことばかり書いているが、対する妻役のケイト・ブランシェットも実に少女の時の輝くばかりのまぶしいほどの若さ。これも映画とはいえブラピに負けず劣らず立派でした。そしてその後の年相応の老け役も実に見事。この映画では地味だったけれどしっかりといい演技をしていました。ブラピが決心して家を出て行く時の、耐えながら送らなければならない懊悩の気持ち。その演技は白眉でした。

いろいろ考えさせられる映画です。若い人と、僕のようにかなり人生を過ごしてきた人間とでは見方がかなり変わってしまう映画なのかもしれません。実年輪がどのぐらいかでこの映画の見方もかなり違ってくる感じがしました。秀作です。

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