年当初に見る映画としては随分地味な映画だが、それでもこういうほんのり、やんわり人を愛することの慈しみをじっくり考えてしまう映画だったことに、映画が好きな僕としてはとてもいい選択だったように思う。
59歳で突然リストラされてしまう頑固爺が主人公なんだが、隣に引っ越してきた、まるで自由な、でも芯はしっかりとしている家族に触れていくうち、心の雪解けが始まるという筋書きであります。
もはや絶対的な、愛する妻を亡くし、この世に生きてゆく意味を見出せないこの親父は自殺を企てるが、何回も失敗してしまう。けれどそのうち人と触れ合うことに喜びを見出してゆくのだった。
見終わって、なんだかんだ言って、この親父が一番幸せだったことに気づく。あんな素晴らしい妻と何年間も生活できたんだからそれだけでもう素晴らしいことなんだよと思う。この映画の終わりのように、死が愛する亡き妻との邂逅を意味するものだったら、何も苦しみながら生きてゆく必要はないような気もする。
この映画、あのラストちょっとずるいなあ。きれいだったけどあれはちょっとないよ。美化しすぎてる。
でも全体的に、思ったより明るい色調で、この爺の周囲を描いている、何たって、あの集落は素敵だ。現代のオアシスなんだろう。引っ越してくる家族がイランの難民だというのも光っている。佳作です。
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