お気に入り監督ロイ・アンダーソンの新作です。彼の作品は一言でいうと「侏儒の言葉」いわばアフォリズム集のようなものだと僕は思っている。屈託のないさりげない人生のカット集には今回も強く惹かれる。
そして本作、いつもより毒が少なくなっているように思える。その分親近感が増すが、作品としてはいつもより平板に見えぬこともない。しかし、そこはアンダーソン、ただではころばぬ。むしろ普通の人々にこそ、人生の真実があるとでも言いたげで、以前の作品より人間へのアイロニーが濃く、愛情が増していることに気づく。
北欧の鉛色の空を基本に人生の厳しさを感じる映像ショットが続くが、空に抱擁し移動する男女や、ゴルゴダ丘まで鞭で打たれ歩く現代のキリスト像が強く印象に残る。
彼の作品は現代人への優しさにあふれる愛の豊穣であり、オアシスとなり得る。
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