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やわらかい手 (2007/ベルギー=ルクセンブルク=英=独=仏)(サム・ガルバルスキ) 85点

2008-01-20 10:17:55 | 映画遍歴
イギリス映画って本当に人間の人生を限りなく真摯に見つめていてその切り取り方が鮮やかです。
最初渋谷でこの映画が上映しているのも知っていたんですが、マリアンヌ・フェイスフル主演ということで断念したことがあります。というのも、僕にとってはマリアンヌはヤングのときの永遠の女性でしたから、40年ぶりにその老醜ぶりを見たくなかったわけです。美しいものは永遠に僕の胸に暖めたかったのです。アンナ・カリーナの変貌にショックを受けた僕は余計加速度を増したわけです。
その後映画的にも評判がかなりいいと聞くにおよび、そんなこと言っておられんと早速見に行ったわけですが、これが聞きしに勝るいい出来です。ちょっとしたことで人生が変わってしまう転回点(ターミナルポイント)は年齢、性別、環境に関わらず間近にあるものなのだと、、。

マリアンヌ・フェイスフルは見るからにもう老成の域に達している。孫のために家まで売却してしまっているが、まあ普通の平均的過ぎる熟年の女性だ。このまま何もしなければ、近所付合いもそこそここなし、多少嫁との隙間風はあってもまあ家族的にも順調な平凡な人生を全うできるはずだった。
ところが孫の難病のために大金が必要になったとき、ちょっとした弾みで今までの60年に匹敵する人生への自信と一番必要だった(ほとんど忘れていたが)愛というものを人生の終盤で獲得することになるのだ。
まったく平均的な普通の老女を主人公にしているのがいい。また題材が本当は誰もが多少の経験はしているという風俗の世界だというのがいかにもイギリスらしい。

庶民のまなざしなのだ。風俗ビジネスというプロットから、利益のみを追求するのではなくやはり心が必要であるとか、社会的にオミットされている人たちも生き方を通して働くことの出来る場というものもあるのだ、ということをさらっと言ってのける。
映像的には特に凝っているところもなく、本当にシンプルな演出だが、脚本がうまいですね。主人公の心にすっと入っていったらもう画面のとりこになっている。
ラストも、重い旅行かばんを引きながら通いなれた風俗ショップに帰り着き、ショップオーナーと初めて交わすキッスシーンもも簡潔で、すこぶる印象的だ。その後どっと溢れる涙を止める努力をしなくなる。
イギリス映画、やはり人生、特に身の回りのものを題材にしていくその手法は健在だ。
ところで、マリアンヌ・フェイスフルは、40年ぶりの対面でございましたが、相変わらず可愛く、惚れ直しましたことをここに告白いたします。

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