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原爆の子 (1952/日)(新藤兼人) 70点

2007-08-07 18:50:38 | 映画遍歴
55年も前の映画であることをまず今初めてこの映画を見る観客としては構える必要があると思う。
原爆そのものを世界に知らしめる必要もあったのだろうし、原爆の悲劇をただ政治的メッセージとして伝えるそんな単純な図式にもしたくなかったのであろう。構成としては幼稚園の先生が教え子を広島に訪ね歩くといったエピソード式である。
この先生自体もほとんどの肉親をヒロシマで亡くしているのだが、冒頭で少し触れられるだけでほとんど黒子扱いであり、先生の内面に入り込むことはしない。そのため、教え子の家族の不幸がクローズアップされるという効果は生んでいる。
今から見ると知人のところに行っても気楽に泊まるとか、昼間から銭湯に一緒に行くとか、不思議な風俗が見られるのがなかなかいい。
祖父の心情をあまり考えないで教え子を島に連れて行こうと強行することはどう考えてもあり得ないことなのだが、先生を黒子扱いしているので、まあ事実が進んでいく感じでフラットな気にもなれる。当時は親のいない子供たち(浮浪児)が巷にあふれていたのだろう。
一貫して、先生は涙一つ見せず、淡々とヒロシマの悲劇を観客であるわれわれに伝えていく。劇映画としては淡々とし過ぎな感もあるが、当時としては精一杯の原爆初劇映画であったのだろう。
被爆の瞬間の映像は演劇的で、逆にこの部分が新藤のこだわりと受け止めた。

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