6歳当時、ボート難民だった男性が父母の遺骨を散骨するためにサイゴンに戻ってくる。さて、男は祖国というべきか、このベトナムというものすごい繁栄を遂げた国に何を思うべきか、、。
冒頭の5分間の俯瞰から道路ターミナルを写した映像が見事です。バイク、バイク、車もあるがものすごいバイクが、交差点いっぱいに、それぞれをよけながら走る。これが今のベトナムの繁栄の姿だ。その有様は、まるで昆虫のようでした。
難民脱出を諦めた従弟との会話もそうだが、彼はほとんど聞き役に徹している。出会い系で邂逅した男との会話もどちらかというと聞き役だ。自分がどうしたいのか、何を悩んでいるのか、だれに告げることなくこの映画は終わってゆく。
サイゴンでも、ハノイでも当たり前のように男性と交友する男は、生きていることをセックスだけで感得しているかのようだ。そしてその生をベトナムの風土、色、空気と同化しようとする。
ラスト、屋上から見るサイゴンの空の光景は、散骨という儀式より、自分のこれからの自由に意味を見出そうとするかのようないいショットであった。
それは同じボート難民を経験したホン・カウの決意でもあったのかもしれない。
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