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HACHI 約束の犬 (2008/米)(ラッセ・ハルストレム) 80点

2010-02-13 13:39:28 | 映画遍歴
何のてらいもない、ごくごく自然な対象への憧憬が存在すれば、かくのごとく自然で且つピュアな世界を構築できるという至極の体験をこの映画を通して我々は知ることになる。

ハチとの出会い、そして限りなくいとおしい日常。ハチが家に引き取られるまでのエピソードの積み重ねがごく自然に描かれて、欲のない演出タッチがまた素晴らしい。まるで、柔らかい筆で薄い色彩画を描いてるかのごとく流麗だ。【ハルストレム】は驚くなかれ、初期の映画のようなすがすがしいタッチで紡いでいる。

犬が見える映像は色彩がないと言われるが、映画の方もハチの視点になると画面から色合いが消える。ハチが逆さまになると画面も同時に逆になる。このように犬の視点から見える人間世界も面白い。ごく自然の映像なのだ。

出会いがあれば、別れもある。ハチは愛する人との別れを経験することになる。10年間駅前で主人を待つハチ。駅長、駅前の物売り、肉屋の主人等々普通の人々の描写がいい。本当にフラットだ。郊外の小さな駅なのだが、素晴らしく人間味があり、ある意味この街には悪人が一人もいないのでは、と思わせるような透明感が漂っている。

たった一匹の犬との邂逅と別れだけで人生の真実を写し取った【ハルストレム】の腕は冴えわたっている。物語というものはシンプルなほど感銘も深くなるのだ。これぞ珠玉映画。

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