『八月花形歌舞伎』に行ってきました。
演目は「宿の月」と「怪談乳房榎」です。
『宿の月』は舞踏劇。亀太郎(橋之助さん)とつる(扇雀さん)夫婦のお話。
春に祝言をあげ、仲睦まじい姿から子どもも出来、つるさんに貫禄もつき、倦怠期を迎える。そんな様子を季節をおって表現していきます。
歳月を経て、小判磨きに夢中な妻に対し、外で怪しい音がすると伝える夫。妻は夫を外に突き出します。でも、これは夫が妻の愛情を確かめるためにした芝居・・・一人で暴漢と戦っているふりをするのですが、最後に夫を助けるために大切な小判を差し出す妻。
私は舞踏劇は眠くなる事が多いのですが、この宿の月は笑いもあり、最後まで楽しみました。なにより、扇雀さんの小判を前にして『むふふふふ・・・』を笑う姿が面白い。そして、その扇雀さんがとてもかわいい・・・・・男性なのにね。そう感じさせるのが歌舞伎の面白みなのかもしれないな~~
『怪談乳房榎』は勘太郎さんの四役早替わりがみどころです。
物語は、絵師菱川重信の妻お関(七之助さん)に惚れた磯貝浪江(獅童さん)が、重信の内弟子に入り、重信が留守の間にお関を我が物にしてしまう。
そして人の良い下男、正助を脅し師匠の重信を殺してしまいます。挙句の果てには、重信とお関の子どもも殺すよう正助に命令し、正助自身も殺そうとします。
まったくもって、獅童さんの役どころは悪い奴。とことん悪い奴です。
勘太郎さんは重信と下男正助、磯貝浪江と同じくらい悪いうわばみの三次を演じわけます。早替わりって、実に面白い。今、たった今、舞台から引いたのに、全然違うところから、違う役で現われる。正助と三次が戦う場面なんて、どうなってるの?って思い、どんどん話しにのめりこんでしまいます。だから、だんだん体が前にいきそうになる。観劇での前傾姿勢はご法度なのに自然と体が動いちゃう。
脅されて正助は、赤ちゃんをも井戸に投げこんで殺そうとするのだけど、重信の亡霊が現われて赤ちゃんを救い改心するように話す。もちろん重信の亡霊も勘太郎さんです。
正助は赤ちゃんを抱いて、赤塚宿(板橋区下赤塚)に逃げ育てていくのです。今回はここで終わるのですが、最後に落語家、三遊亭円朝が登場し物語の続きを話すという趣向。この円朝さんが、勘太郎さんの四役目です。
一番悪い磯貝浪江が残っているじゃない!!と思っていたら、重信、お関の赤ちゃん。正助が連れ帰って育てた赤ちゃんが5歳になったときに、無事にあだ討ちをしたという結末でした。
タイトルの乳房榎は、榎から出た樹液で赤ちゃんを育てたといわれがあり、板橋区下赤塚の松月院にその木があるそうです。ただし、もう3代目か4代目だとか・・・・・
長いレポになっちゃった・・・
写真は、歌舞伎座名物の「めでたい焼き」。今は歌舞伎座がないけれど、新橋演舞場でも売っていました。中に紅白の白玉が一つずつ入っています。もちろん、美味しかったです。