涼宮ハルヒ:『涼宮ハルヒの消失』から『動揺』までの感想

2007-02-01 02:24:58 | 本関係
今日『涼宮ハルヒの陰謀』と『涼宮ハルヒの憤慨』を購入。これで最新刊まで揃ったわけだが、この手の小説を全巻集めたのは高校三年の終わりに買った「ブギーポップ」以来だ(これについてもいずれ何か書くかもしれない)。まあそれはさておき、第四巻にあたる『涼宮ハルヒの消失』(以下「消失」と略す。他も同じ)から第六巻『涼宮ハルヒの動揺』までの批評を簡単に書いておく(個別の感想・批評は気が向いた時に)。


(消失)
長門の行動は後に来る「エンドレスエイト」の影響もあると思われる。とはいえ、みくると&ハルヒとキョンとの繋がりがなくなるor非常に弱くなっていること、そしてキョンが必ず来て、そして拠り所とするであろう部室に変質した長門がいたことからすれば、改変がキョンとの繋がりを深める狙いだったのは明らかだ。つまり長門が世界を作り変えた最も大きな原因は、キョンへの好意であったと考えられる。とまあそれはすぐに読めるわけで、そこから長門萌えの読者が増えただろうと推測される。

なお、この中でキョンは望んでいたはずの平穏(つまりハルヒに振り回されることのない世界)を自ら棄てており、それは言い換えれば「普通との訣別」である。この行為・考え方は『憂鬱』の冒頭とも繋がってはいるのだが、これを機会に今まであった日常と非日常、普通と異常、平穏と騒乱(?)といった対立の構図がかなり曖昧になったのも事実。また、キョンがわざわざ読者に語りかけ、自分の視点を強要しているのはあまり上手いやり方ではないと思う。なぜなら以前書いたように、涼宮ハルヒはキョンの独特な視点に支えられつつも古泉や長門の視点、あるいはそれらをより高い位置で見れるところに魅力があったと思うからだ(古泉の言うことは、単に煙に巻いているだけとも読めるし筋の通った意見とも読めるetc...)。もちろんキョンの視点でしか見ない読者も多数いるとは思うのだが、それはそれで主人公の語りかけは興ざめなのではないだろうか。とはいえ、「これから涼宮ハルヒシリーズはせめぎ合いよりも『普通との訣別』を前提として話を進めていきますよ」という姿勢表明として、意識しておく必要はあるだろう。なお、これを見たときにこの姿勢はいかにもラノベに繋がっていきそうだと感じたことを書き残しておく。


(暴走)
まず「エンドレスエイト」だが、「日常における違和感の萌芽」という観点から見て結構おもしろかった。よく出来た短編だと思う。ところで内面と会話がそのまま繋がっているシーンが一個もなかったのでとうとう何か来るのか!?と期待したら、「射手座の日」はそのまんまでちょっと肩透かし。ただ、この話だけそういう表現方法がないのは何か意味あるのか?と疑問は残る。

続いて「射手座の日」。長官ハルヒは「一番タチの悪い上官」というのを体現していたのが笑えた(まあ後ろでのうのうとしている上官の方がマシかと言えば、んなこたないだろうけどw)。やはりハルヒは意識的に迷惑な存在として描いているなあと感じられる話。単なる猪突猛進。無能なビッテンフェルトはこんな感じか。『消失』に続いて長門萌えが増殖しそうな内容。みくるへの対抗措置か?w

「雪山症候群」も意識とかコピーとか象徴とかで、なかなかおもしろい。もっと掘り下げてもよかったんじゃないかと思った。「見えない敵」から新展開へと繋がっていくのだろうけど(『動揺』の「朝比奈みくるの憂鬱」でテーマ的には引き継がれる)、それでも最後がちょっと尻すぼみしている感は否めない。


(動揺)
今までさらっと流されていた辺りの小話&いかにも伏線になりそうな(だけの)話が多く、率直に言って「あまり中身がない」という印象。ただ、前述のように「朝比奈みくるの憂鬱」で何かしらの敵(もっとも、ハルヒにとってなのかみくるや長門にとってなのかは不明)がいるのが暗示されるという点で他と繋がっていること(少年とハルヒに繋がりがあることからすれば結局「雪山症候群」同様ハルヒ絡みだろう)、加えて「朝比奈みくるの冒険 Episode00」の皮肉の効いた突っ込みを考慮に入れれば、『動揺』の評価は次の長編『涼宮ハルヒの陰謀』がどうなるか次第だ、と思っている。また、「ヒトメボレLOVER」も「全ては決められたレールの上を走っているに過ぎない」と考えて見ればおもしろい。実のところ、色々なことに巻き込まれすぎた結果、キョンは意識的・無意識的にがんじがらめになっている感があるが、これもまたその一つ(未来とは逆だが、こういう話を観ると私は「縁(えにし)」という過去との連鎖を想起する)。ところでこの話は、いわゆる「普通の人」でない存在は身近にもいるのだと暗示する役割も果たしている。ここで特に注目すべきは、そういう特異な存在がハルヒの願望とは関係なく現れるようになったという変化だろう(少なくとも読者にはそう取れる書かれ方になっている)。このまま行けばブギーポップじみた要素も入ってくると推測されるが、まあとりあえず新たな「敵」と合わせてどういう方向に進めていくのか気になるところではある。


ざっとこんな感じだ。『陰謀』と『憤慨』を読み終えたら、また何か書こうと思う。

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3 コメント

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Unknown (極薄装甲板)
2007-02-01 20:09:53
憤慨まで読んだら、是非、二次創作ですが、
微笑を読むといいですよ。
二次創作の中でもかなり別格の代物です。
しかも憤慨までのほぼ全ての謎を解き、
ハルヒ完結編という感じになっています。
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Unknown (極薄装甲板)
2007-02-01 20:12:03
あ、『涼宮ハルヒの微笑』です。
すいません。
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Unknown (ギーガ)
2007-02-02 01:46:43
それはおもしろそうですね。今度探してみます。
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