結婚するよりロボット買ったら?

2015-09-06 17:01:28 | AI

非婚率の増加に関する議論がかまびすしい。40代の男性でさえ、およそ20年前からすると非婚率は15%も上昇し、10人に1人だったのが4人に1人となっている。加えて日本は婚外子の出生率が2%程度であるから、それがそのまま出生数・率の低下にも直結するとなれば、話題になるのも頷けるところではある。

 

ところで、様々な「結婚したい理由」を見るにつけ私が思うのは、そのほとんどが家事ロボットないし介護ロボットで賄えるなあということ。たとえば「自分の趣味に関して話ができる存在が身近にほしい」、「自分の忙しい生活をサポートしてほしい」、「老後のことが心配」、「病気や孤独死のリスクが心配」etc...これら全て、生身のパートナー(=モノを言う他者)よりロボットの方がニーズに応えられるのではないか?なんせお金を盗んだり悪意をもって自分の生活環境を破壊することもないだろうし、時に予定調和が虚しく感じられるなら、人間との一時的な交流を求めれば済む話である。私がしばしば批判的に取り上げるノイズ排除の強まり(そこではモノを言う他者は不要である)、あるいはペットを家族と見なす人がますます増えていることなどからすれば、そこに(介護などの)ロボットが成り代わることになんの不思議があろうか。たとえそれがプログラミングされたものであろうと、モノを言う親族より「尽くしてくれる」存在として遺産相続の対象にすらなっていくかもしれない(余談だが、私の父方の祖母は祖父の介護・虐待で入院し、またそのことで父と祖母が祖父の兄弟と喧嘩をして今は半ば絶縁状態となっている。ついでに言っておけば、日本人に多いとされる「異物を他者と認めるのではなく、異物に対して感情移入・埋没しやすいメンタリティ」というものが実際にありえるのならば、「her」のような腰砕けの展開も起こりにくいだろう)。

 

もちろん、このような傾向が現実化していくとしたら金銭的な問題が間違いなく発生する。いくらするのかは想像もつかないしまた値段も変化はしていくだろうが、おそらくローンを組んで購入することにはなろう。独身は金を貯めやすい。結婚式・育児・就学といった自分以外で要求される出費が少ないからだ。であれば、将来への投資として、その金銭を介護ロボットにつぎ込むのだ(まあここでも耐用年数の問題が出てくるが)。もちろんそれを望まぬ人たちはもいるだろう。その場合は、上野千鶴子「おひとりさまの老後」のように、親しき友人達とハウスシェア、リスクマネージメントして生きる方法もある。しかし、それが難しい場合、無理をしてパートナーを探すのではなく、自分の生活を変えることなく自分の生活に奉仕してくれるツールをあてにした方が、自分のやりたいことをやり続けられるし、ストレスもないというものだろう。

 

・・・とか何とか。
まあ好き勝手書きましたが、冒頭の話を繰り返すと、様々な結婚したい理由を見ていても、「子供がほしい」以外は全て結婚によらない方法で代替が効くとしか思えないってことである。パートナーを自分の生活の介添役か何かだと奥底で思っているのなら、あるいは結婚しないと一人前と見なされないんじゃないかという自他のプレッシャーで結婚を考えているなら、この先未婚率が上昇しはしても下降することは決してないだろう。よく知られているように未婚率は所得と極めて密接な関係がある。となれば、「地方消滅」にもあるように(よほど対策を施さなければ長期間にわたって)ますます少子化・高齢化・人口減少が進み経済が停滞していく中で、未婚率が上がる要因こそあれ下がる要因など全くないからだ。たかだか数十年の伝統とやらにしがみついた政策と一般市民の意識のもと婚外子出生率は上がらず(ちなみにOECD諸国の中でそれが低いイタリアやスペインは出生率が1.3程度で日本と近い水準、新生児の二人に一人が婚外子など率が高いスウェーデンやフランスは1.8程度と出生率も高い)、そして結婚は経済の停滞のもとますます難しくなっていく。そして子供を産み育てることは「自己責任」として相対的に貧弱な保護しか受けられない。出産は自分たちの生活を圧迫するだけでなく、収入の減少を伴ったり、そのケアについて周りから白い目で見られる「リスク」でしかない。それを乗り越えられるのは、初めから心配する必要がないほどに金銭・人的資源に恵まれているか、あるいは「勢い」しかないということになってこないか?だとすれば、繰り返しになるが前者は数が減っていくであろうし、後者はアドホックなものでしかないので、出生数・出生率が高まることなど夢物語であるなあというのが今の私の率直な感想である。

 

不安は増大する中、技術は進歩していく。そうなった時、おそらく読者の多くが「そんなもん金持ちしか無理じゃねーか」と思ったであろう先ほどの選択肢(世界)が、十分な現実味をもって我々の前に立ち現れてくるだろう。

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