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「ステーキぐらいじゃ私の機嫌は直らない」
という入口前の広告は、引き返せというお達しなのか、それとも興味を引かんとする策略なのか?しばし考えるも、わざわざ中に入ろうとまでは思わず、通り過ぎる日々が過ぎた。
そんなある日、Sくんから「まるり」というビフテキ屋が非常に美味いと聞き、場所を教えてもらっているうちにかの奇妙な広告を出している店のことだと知ったのである。
それは荻窪駅北口を出て1分とかからない日高屋のあるビルの三階に存在している。狭い階段を登っている途中に古めかしい広告がいくつか貼られており、レトロ風な居酒屋か何かを想像していると入口は別段特徴がない。店内に入ると、少し年季の入った喫茶店風の内装が広がっており、扇風機のような骨組みの時計などが独特の雰囲気を醸し出している。落ち着いた雰囲気だが、さりとて入りにくいということもない。まさに「穴場」といった言葉がふさわしい空間である。
席に座ると、ポテトサラダがうまそうな「まるりサラダ」とベーコンチーズハンバーグを注文し、本を読みながらしばし待つ。早速まるりサラダが運ばれてきて食すると、これは美味い!正直ステーキ屋のサラダなんぞ添え物にすぎないと思っていたが、これはサラダだけでも全然いける。サイドメニューでこのレベルとは侮りがたし。
さてハンバーグとご飯・味噌汁(両方お代わり自由)がやってきた。冷めないうちにハンバーグとご飯を口に運べば、これまた思わずうなってしまう出来の良さ。チーズ・ベーコンも味わい深く、食材をきちんと選んでいるのもさることながら(と偉そうに書いてみるw)、ご飯も美味しいのにはおどろいた。もはや大盛りとは訣別したはずの私が、つい3杯も食べてしまったのだから、これは本物である。最後は調子に乗ってデザートまで頼んでしまったが、こちらはクリームチーズを細かく切ったものとはちみつ・ドライフルーツの組み合わせになっていて、特に微妙な塩気をきかせているところがすばらしかった。「もう少し食べれるが、しかし十分満足した」と感じさせる後味・分量の妙も言及しないわけにはいかないだろう。この店のすばらしい所は、メインの肉料理は言うまでもなく、その周辺を固める料理もきちんと作られていることだ。思うに、コストを考えれば、ご飯やサラダはそこそこのものにしておいて、がっちり肉を食べられることで引く分量勝負に出てもおかしくなさそうだが、この店ではそういう所が感じられない。ある意味その「丁寧さ」に粋を感じるのである。そしてこのような印象は、そのあと何度か足を運んでビフテキや中落ちステーキ、牛スジ(ドライカレーが最もお勧め)などを食べてますます強くなることとなった。
こういうわけで、私はこの「まるり」という店の常連と化したわけだが、実際店員とのやり取りを見ているとかなり年季が入っていると思しき客も多い。店の空間的居心地の良さと、全体的な質の高さを思えば当然のことだろう。肉料理好きはもちろんのこと、そうでない人にもぜひ一度訪れてほしい名店である。
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