ジプシーの旅:復讐への輪舞曲

2015-03-06 18:05:02 | 音楽関係

 

 

先日ドラクエ3のフィールド曲100分間耐久を聞きながら、perfect handlingという記事を書いた。その後でドラクエ4のジプシーの旅を聞き返してみてお改めて思ったのは、ファミコン版が最も素晴らしいということだ。それはなぜか。なるほどPS版やオーケストラ版はFC版と比較した時に曲調が柔らかく、「不安」や「儚さ」は感じられる。でも・・・ドラマツルギーがないでしょ!!

 

確かに、女性二人で父の敵を討つ旅に出るという展開に不安や儚さといったイメージは上手く重なる部分もある。しかしながら、ここはドラクエ4が復讐の物語であることを忘れてはならない。シンシアや自分を育ててくれた村人を皆殺しにされ、勇者は独り旅に出る(この時の儚げな曲調はまさしく主人公の内面そのものであるように思われる)。そしてロザリーを殺した人間を憎悪し復讐のために怪物となったデスピサロを倒すという展開は、初めから善玉・悪玉がいてそれぞれが役割の外側へはみ出ることなく(=何の疑問も抱くことなく)ラスボスを倒すという単純な冒険譚とは一線を画している。

 

ライアンからトルネコフィールド曲を聞くと、どれも牧歌的である。それは内容が謎解き(1章)、強さを試す(2章)、商売で成功する(3章)であることからすれば必然的なものであると言える。そこには、悲惨さや陰影といった要素はほとんど入り込む余地がない(唯一2章の最後で不吉な予兆が暗示されているくらいか)。しかし、それが劇的に雰囲気が変わるのが4章なのである。4章は父を殺された復讐への旅立ちから始まる。ある意味ではすでに冒頭から陰影を抱えているわけだが、それだけではなく4章の最後は敵を討ったと思いきや黒幕キングレオが現れなすすべもなく敗れる。しかも、城から脱出する際には、仲間となったオーリンがとなって身を挺して二人を逃がし、戻ってみるとオーリンは「ただのしかばね」となっている(まあ実は生きてるんだけども)。結局モンバーバラの姉妹はバルザックへの復讐を成し遂げるどころか仲間を失い、異国へと旅立つところで第4章は終わる。そして第5章冒頭の惨劇へと描写は移っていくのである。

 

ことほどさように、ドラクエ4は第4章から(繰り返しになるが)雰囲気が大きく変わるだけでなく、「ドラクエ4は第4章からようやく始まる」と言っても過言ではないのである。であるならば、4章はそれまでの牧歌的なフィールド曲とコントラスをなすようなものであった方が効果的なのは言うまでもない。そういうわけで、ゆったりとした抑え目のPS版やオーケストラ版ではなく、最初から激しいテンポ・強い曲調のファミコン版の方がより相応しいものだと結論づけられるのでる。


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