ひぐらしのなく頃に卒:第二話の感想→〇〇の改心と沙都子の罪深さ

2021-07-06 11:22:22 | ひぐらし

「ひぐらし 卒」の第二話まで見終わったので早速感想を書いていこうと思う(ちなみに第一話に関する記事はこちら)。

 

「ひぐらし 業」が(郷壊し編をの除けば)世界のルールと各世界(~編)の犯人を考察する展開だったのに対し、「ひぐらし 卒」、少なくとも鬼明し編は世界の構造(誰がこの世界を作り出したのか・そして「ハッピーエンド」条件)もわかっているため、解答編というかスリラーの要素が極めて強い(と見せかけて実は・・・という罠が仕掛けられてる可能性はあるが、最初は多分ストレートに話を展開するんじゃあないかな)。

 

そういう事情もあるだろうが、ただ説明的な描写をダラダラ流すことにならないよう、見せ方にこだわっていることが強く感じられた。その一例が、今回のハイライトとなるレナとリナの邂逅と惨劇だろう。

 

周知のように、罪滅し編においても二人は同じ場所において二人きりになっている。そしてそこでも惨劇は起こるのだが、その時に手を出したのはリナからであった(レナの父親を篭絡する上で邪魔になる彼女を亡き者にしようとして)。その中でレナが逆襲してリナを殺し、後にはレナの策略にハマった鉄平も殺害したわけだが、言い換えれば最初は正当防衛だったのである。

 

しかし、今回のリナ殺害がそれと大きく趣を異にすることは言うまでもない。第一話の記事でも指摘したように、そもそもこの世界のリナは改心の余地が大いにある存在として描かれている(もちろんそれは鉄平や鷹野がそうであったように、繰り返される惨劇の中で蓄積された檻のような記憶が、破滅的思考・行為に歯止めをかけているのだが。なお、元々美人局の行為は鉄平もグルだったので、鉄平の変化がリナにも影響した部分があるのかもしれない)。

 

そしてリナはレナの元を訪れるが、それはむしろレナの父親との関係を清算するきっかけ作りをレナに依頼すると共に(その行動に賛否はあるだろうが)、自分と似たような境遇で育った竜宮礼奈という存在と会ってみたかったという動機づけであるように思える(でなければ、わざわざアポイントもなしに家を訪ねていく意味がわからないし、あのような場所にわざわざついていく理由が見つからない)。

 

こうしてリナはおそらく同様に傷ついた魂を共有しているであろう存在と邂逅し、かつまたその存在と理解し合うために土砂降り・人気がない・足場が悪いという通常なら絶対足を踏み入れなそうな場所・状況に、あえてその身を投じたのであった(車の中まで入り込むのは、一般的に考えれば、いくら土砂降りという状況があろうと、無警戒にも程があると言える)。

 

その結果がどのようなものであったかは、詳細に繰り返す必要はないだろう。自分の身を守ろうとこそしたものの、レナを攻撃はしなかったリナは、最終的に惨殺されたのだ。

 

私はこの描写を見て思わず唸らずにはいられなかった。その理由は二つあるが、

1.

この描写がレナの行為にある程度の致し方なさを感じさせる罪滅し編と強いコントラストをなすとともに、そのような罪を人為的に犯させた沙都子の行為の罪深さが印象付けられる(これはダメ押しとばかりに見下ろす沙都子の姿で強調されているが、正直あれは蛇足の感を覚えた)。これを踏まえると、なおのこと「ひぐらし 卒」がハッピーエンドで終わる必然性を感じることができず、一体どういう展開にするつもりなのだろうか?と戦慄したが、おそらくこれは「ひぐらしだしどうせ最後は大団円なんでしょ」という予測を無効にする演出と思われる。

2.

善意が最悪の結果を生み出すという状況を、私たちはすでに鬼騙し編の圭一で見ている。それはつまり、疑心暗鬼でチェーンを開けなかった鬼隠し編に対し、過去の記憶もあってレナを信頼してチェーンを開けた鬼騙し編は、レナによって瀕死に近い重症を負うことになったというコントラストである。あれはあれで「仲間への疑心暗鬼が惨劇を生む」という旧ひぐらしの教訓を覆すことで「この世界は旧ひぐらしの認識では生き延びれない・救えない」ということを視聴者に実感させる白眉の演出だったが、それを鬼明し編は違った形で表現したということに他ならない。

ということだ。いやはや、「ひぐらし 業」でもさすが長い期間かけただけあってよく練られている(沙都子と梨花の仲たがいの原因以外はw)と思ったものだが、「ひぐらし 卒」の演出にも同じことが言えそうである。

 

ちなみに、私がこの描写を見つつ思ったのは、「これまでやたら改心した人間ばかり出てきたけど、ループ世界で頭がおかしくなった人間って逆にいないのかね?」ということだ。まあ梨花が沙都子にリザインしたらそうなる、と言う事もできるだろうが、今私が引っかかっているのはOPで大学生の姿をした部活メンバーたちがことごとく剣呑な様子であることだ。思えば「ひぐらし 業」の「嘲笑った」について、羽入が惨劇から逃れようとする梨花を嘲笑うはずもなく、かつこのシルエットはアウローラ(≒カケラ世界の上位にいる存在)ではないか?という趣旨の話をしたわけだが、部活メンバーたちのあの奇妙な描き方はそういった疑惑の目でみると非常に示唆的に思えてくる。これについて、まだOPをフルでは聞けてないので、一度考察記事を出してみたいものである。

 

さて最後に。今回は謎解きというよりはスリラーということで描写の妙や象徴的表現に注目してきたが、もう一つ感心したのは、症候群を発症したレナが事態を悪い方へと解釈していく負の連鎖の描写だ。随分前に私はひぐらしをアニメ化することへのそもそもの違和感は症候群の世界を客観描写で描くことになってしまう点だ、と書いたことがある。しかし、第二話で私たちが見ている世界は極めて自然・正常なようで、同時にあのレナがどう脳内変換しながら見ているのかも(鬼隠し編・鬼騙し編・罪滅し編も知っているがゆえに)手に取るようにわかる描き方になっているのはよく作られているなあと感心した次第だ。

 

というわけで、おそらく第三話は圭一襲撃、そして第四話は鬼騙し編でブラックボックスになっていた梨花と沙都子の「相討ち」が描写されて、次の第五話から綿騙し編の解答編が描かれると予測されるが、そこでどんな演出の妙が見られるのか、今から非常に楽しみである。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北陸遠征の記録:白川郷の神... | トップ | 北陸遠征の記録:黒部渓谷ト... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ひぐらし」カテゴリの最新記事