宝塚の黄昏:閉鎖性、ブラック校則、組織力

2023-10-23 11:15:46 | 感想など

 

 

現在公演休止中とはいえ、色々グレーというかブラックな規則や慣習があるらしい宝塚の内部にメスが入るようなことがあれば、こっちもこっちでえらいデカい問題になる可能性を秘めていそうだ。

 

動画にあるような「Show must go on」的表現をすると何か強い意志がある感じがするけど、実際には日本でよく言われる「今さらやめられない」って翻訳すると、途端に無責任な小役人感が出てきますな(インパール作戦2021年の東京五輪、そして現在絶賛「準備中」の大阪万博etc...)。

 

さて、ジャニーズ問題の時もそうだったけど、宝塚の組織的特徴というのを自分はよく知らなかった(全く興味がなかった)ので、独特な規則・慣習の話は興味深かった。まあ閉鎖空間ってだけでも人間はおかしくなりがちなのに、そこへ絶対的な上下関係まで加わるなら、問題を起こしてくださいって言ってるようなもんである(最近の例では「教育教育教育・・・」の某会社を出せば十分かと思うが、その他典型的なものとしては、軍隊における私的制裁行為の数々は旧日本軍など含めよく知られたところである)。そのことを踏まえて、よほど合理的な仕組みづくりをしない限りは、非合理的なルールがまかり通ってしまうわな。あるいは「団員(の一部)たちが勝手にやっていることで把握していなかった」というどっかで聞いたような言い逃れをし始めるかもしれないが、そもそもこういった「慣習」がここまで広がってたのを把握してないのは組織として管理者として無能だし、その責任を厳しく問われることになるだろう(今のジャニーズ問題に対する政府・警察の不作為と同じことである)。

 

あと、宝塚の歴史に加え、支持者がハイエンドな層というのも興味を引いた。というのは、ジャニーズ問題に限って見れば、現代サブカルチャー(ポップカルチャー)+アイドルの支持者=新興層・中間下位層メインという話になるけれども、今回の事件により改めてより広い層、すなわち芸能・芸事一般の問題として認識される可能性が高まったからだ(もちろん、芸能の世界の成り立ち自体がそもそもアウトローなどと関係が深いグレーな領域であることを知っている人には釈迦に説法だと思うが)。

 

ところで、動画の中では「こんなタイミングで自殺するなんて迷惑千万。むしろ自分たちは被害者だ!」的な内部の人の(?)SNSが紹介されていて、お二人ともドン引きしているが、実はこれ日本社会でよく見かけるヤツじゃないかね?とも思った。

 

これは問題が軽微という意味ではなく、先の支持者層の話と同じく「強い一般性がある」ということだ。
つまり、会社とかで「このクソ忙しい時に死にやがって、人手は足りないし査察が入るとか言ってるしマジ迷惑!」とか、「繁忙期に何で体調崩してやがんだよ這ってでも来い!」といった物言い・・・そう、日本のブラック企業や過労死と類似しているのだ。さすがにここまで極端じゃなくても、大なり小なりこういう「仕事>人間」という発想に毒された職場というのは決して少なくない(まあその典型例は、ケガをしたスポーツ選手が「謝罪」する行為なわけで、その意味では企業のみならず日本全体にそういう風土があると言っても差し支えないだろう)。

 

さらに言うと、宝塚内のルールに関しては、ブラック校則はもちろんのこと、それへの批判に対して「嫌なら入らなければいい」との見解を示すような、「組織>法律」という近代人としてはいささか異常な法意識をお持ちの人間が散見されることも指摘しておきたい。それでは「法を逸脱した組織が存在するのは当たり前のことであって、そこに属さないのは個人の責任であり、それを抑止するのも、そういった組織を監視・解体するのも社会の役割ではない」と主張していることに自分で気づいているのだろうか?

 

と言いつつ少し深堀りしておくと、ここには「自分が問題と感じないからそれを大事にしたくない・面倒だ」という意識が先にあり、それを正当化するために論が構築されるという認知の歪みに基づいた発言であって、その内容にリテラルに反応・反論しても実は効果が薄い点に注意する必要がある。これは日本社会によく見られる短絡的な自己責任論でもしばしば観察される構造である(なお、こういった意識の背景として、古典的で批判もあるが、川島武宜の『日本人の法意識』などを想起するのは有益だろう。以前毒書会でマンハイムの『イデオロギーとユートピア』を扱った際、普遍主義と個別主義の対立に関して、万民法VS歴史法学(サヴィニーなど)の件を話題に上げたことがあったが、近代日本という観点では、日本社会の実態と乖離したヨーロッパ近代法の移植の中で、ホンネとタテマエ的な法意識が醸成されていったのでは?という相方の指摘はおもしろかった。この点はいずれ考察してみたいと思う)。

 

今各所で噴出している問題を受け、短期的にはルールの透明化+ガバナンス・コンプライアンスの浸透が重要という話になるが、そもそも閉鎖的共同体の乱立と日本人のルール意識(まさにムラ社会!)がどのように醸成されているのかという点について、大組織の内実がボロボロだという複数事例が白日の下に晒されてきている今日、改めて検証・改善する必要があると思う次第である。

 

ちなみに芸能界(芸能の世界)の問題告発という意味で、以下の動画も参考に掲載しておきたい。まあ国内の対応はどうせ及び腰になるだろうが、そう見切りをつけた上で海外メディアにアプローチし、「電波少年」のごとくBBCあたりが報じる事態になれば、一気に潮目が変わるかもね。

 

 


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