全国の山地林床に自生するサイハイランです。日本ばかりでなく千島や台湾中国大陸まで自生が見られるのだそうです。里山の植物ですから丘陵公園にもそこそこ見られます。しかし、少し地味な感じの花ですからあまり盗掘などの被害は少ない種と思われますが、決して個体数が多いというわけではありません。
葉の下には偽鱗茎(バルブ)から1枚でています。移植や栽培が難しい種なのだそうで、数年は偽鱗茎に貯蔵した栄養で開花成長をするのですがやがて使い果たして枯死するのだそうです。ランは菌類との共生関係が顕著なグループです。ある種の菌との共生関係が切れることによるものと推測されています。
里山でキンランを観察していると発生する位置はほとんどほかの種が生育していない空白の場所です。ある程度の光が必要なのだろうと想像していますが、根茎の他の種の影響や菌類との関係があるはずです。この種も移植などをしてもあまりうまくいかないのだといいます。経験的に里山の生態を維持するような管理をして自然に任せると絶えることなくあちこちに発生するようです。
西日本に自生するキエビネの展示もありました。鉢植え以外実物を見たことはありません。自生地の環境は推測する以外にないのですが他のエビネ類の生育する環境から考えています。西日本の基本的な樹相は暖帯林の常緑広葉樹。林床が暗すぎる場所には生育は難しいと思いますからある程度落葉樹が混ざるかギャップが適度に存在する場所なのでしょう。西日本の里山は植林された場所や放置された竹林が多い印象です。果たして現在そういう環境はどれほどあるのでしょうか。