MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ジャコメッティ 最後の肖像』

2018-02-10 00:24:24 | goo映画レビュー

原題:『Final Portrait』
監督:スタンリー・トゥッチ
脚本:スタンリー・トゥッチ
撮影:ダニー・コーエン
出演:ジェフリー・ラッシュ/アーミー・ハマー/シルヴィー・テステュー/トニー・シャルーブ
2017年/イギリス・アメリカ

不条理の無い実存主義の面白みの無さについて

 アルベルト・ジャコメッティの特異な描写の方法がよく分かる。つまりジャコメッティには「失敗作」というものがなく、いつも前回描いたカンバスの上に重ねて描くことにより、カンバスに彫刻刀で彫ったようにモデルの顔が浮かび上がってくるのであり、ジャコメッティの作品の評価とは失敗とか成功以前のその彫りの「深さ」の問題にすぎない。常に「未完成」とはそういう意味だと思う。
 しかし「2日で描き上げる」というジャコメッティの言葉に釣られて肖像画のモデルになったジェイムズ・ロードは母国のアメリカへの帰国が延び延びになっていくのだが、どうもラストが辻褄合わせのようにしか見えない。寧ろ筒井康隆の短編小説「講演旅行」(『おれに関する噂』収録)のように不条理なフィクションとして描いた方が面白くなったように思われる。
 あるいはロードの同性愛志向をストーリーに取り入れてもよかったのではないだろうか? 同じようにジャコメッティに惚れ込んだ矢内原伊作も結婚している形跡がないし、何故「独身者」がジャコメッティに夢中になるのか興味深くはある。


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