原題:『地下街の弾痕』
監督:森一生
脚本:柳川真一
撮影:石本秀雄
出演:二本柳寛/京マチ子/志村喬/伊達三郎/近衛敏明/高田稔/菅井一郎/大友柳太朗
1949年/日本
日本版「ネオレアリズモ」作品について
大阪梅田の地下街で男が何者かに銃殺される。その男は金子みち子の夫で事件を担当することになる刑事の皆川駿二のかつての恋人だった。みち子は薬問屋の御曹司だった金子を選んで結婚したのであるが、転職先の会社は素性がよく分からない会社で、みち子は「TAKASHIMAYA」というダンスホールで働いていた(「高島屋」という店名にコンプレックスが表されている)。みち子の兄の関口一作は新聞記者で皆川の友人だった。
金子が所持していた「T・K」と刺繍が入れられていた特別仕立てのネクタイを手掛かりに捜査していたら貴金属販売会社の社長の古賀泰三に行き当たったのであるが、古賀は盗まれたと主張する。
やがて容疑者として金子と同じ会社で働いていた勝見誠吾を探し出し、捜査主任の藤本裕造の秘書だった五十嵐たね子が「多田」という男を通じて密輸団に情報をリークしていたことも判明し、事件が解決する流れができる。
本作は『裸の町(The Naked City)』(ジュールズ・ダッシン監督 1948年)などのセミドキュメンタリー・タッチに影響を受けたと言われているのだが、貨物列車の襲撃シーンや、大阪府警全面協力による出陣式から現場の神戸に向かう白バイやジープの部隊の隊列と密輸団とのクライマックスの大規模な対決はむしろ例えばロベルト・ロッセリーニ監督作品のようなイタリアのネオレアリズモの影響が濃いように思う。フランスのヌーヴェル・ヴァーグの影響を受けた日本映画は数あれど、イタリアのネオレアリズモの影響を受けている日本の作品というのは珍しいのではないだろうか。もう日本の警察がこれほど映画に協力してくれることはないだろうから、貴重な(最後の?)日本版「ネオレアリズモ」映画である。