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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ファナティック ハリウッドの狂愛者』

2020-09-11 00:59:55 | goo映画レビュー

原題:『The Fanatic』
監督:フレッド・ダースト
脚本:フレッド・ダースト/デイヴ・ビーカーマン
撮影:コンラッド・W・ホール
出演:ジョン・トラボルタ/デヴォン・サワ/アナ・ゴーリャ/ジェイコブ・グロドニック
2019年/アメリカ

ストーカーが逃れられない偏見について

 本作は興行的に大失敗しているのみならず、何故か批評家からも低評価で第40回ゴールデンラズベリー賞にノミネートされ、主演のジョン・トラボルタは最低主演男優賞を受賞してしまっているのだが、ここでは多少なりとも汚名挽回を試みてみたい。
 主人公のムースはハリウッドでストリートパフォーマーとして生計を立てているのだが、仕事仲間に観光客から財布を掏ることを提案されても拒み、パパラッチをしているリーアという女友だちもいる。つまりムースは根は悪い人間ではないのである。
 ムースが俳優のハンター・ダンバーの大ファンになったきっかけは幼い頃にシングルマザーの母親が他の男を家に招いている時に、テレビで見たダンバーが自分と同じような状況に置かれた主人公を演じていたのを見て共感したことで、それ以来、ムースはダンバーのようにハリウッドの片隅で頑張って生きてきたのである。
 ムースは年齢不詳なのだが、近所でサイン会をするダンバーについに会えるチャンスを得るのだが、実際に会ってみたダンバーは離婚による息子の養育などで問題を抱えているためなのかサイン会を訪れたムースに冷たい態度をとり、長年憧れていたダンバーの性格の悪さを認めたくないムースは、「本当」のダンバーを確かめるためにストーカーのような行為に走るのである。
 つまりムースの性格の良さも悪さもダンバーに影響されているのであり、実際のダンバーはムースの右指全てをライフルで吹っ飛ばし、右眼も失明させ、庭で家政婦が死んでいることにも気が付かない酷い男で、それをまるごと「コピー」したようにムースは狂気へ突き進んだのである。
 本作にはストーカーという存在を考える上で、重要な視点が含まれていると考える所以である。


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