原題:『HERO』
監督:鈴木雅之
脚本:福田靖
撮影:蔦井孝洋
出演:木村拓哉/北川景子/佐藤浩市/杉本哲太/八嶋智人/濱田岳/小日向文世/吉田羊/松たか子
2015年/日本
「お堅い言葉」が暗示する作品のクオリティーについて
ネウストリア公国の大使館の裏通りで起こったパーティコンパニオンの女性の交通死亡事故を巡り、ネウストリア公国の大使館員と日本の広域暴力団の薬物の取り引きが絡む、主人公の東京地検城西支部の久利生公平検事と外務省との駆け引きの物語は意外とスケールが広がっていかない。
例えば、乱暴にドアを開けられた際に、そばにいた遠藤賢司が床に倒れ、その後に再び乱暴に開けられたドアに頭をぶつけた末次隆之が床に倒れるというような小ネタはたくさんあるが、作品全体を通してこのような小ネタしか見かけず、思い切った演出といえば、久利生と事務官の麻木千佳と検事の宇野大介がネウストリア公国の大使館員3人とペタンクをする場面くらいで、『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック監督 1968年)の冒頭シーンを想起させる。
ネウストリア公国の公用語はフランス語らしいのであるが、日本の外務官僚とは英語で会話している。しかし外務省欧州局長の松葉圭介が使う英語は気になった。松葉がネウストリア公国大使のジャック・ローランに「ネウストリア公国の人は一日に何本のソーセージを食べるのか?」と訊くシーンがある。その答えである「7本」という数字があり得ないと言いたいのではない。松葉は「一日に」という部分を「per day」と英語で言ったのである。しかし日常会話では「a day」というのが一般的で「per day」という商業英語はなかなか使うことはないと思う。例えば、「This is a pen」という文章は文法的には正しくても日常会話で使用することはまず無いということと同じである。まだ経済産業相が使うならばともかく外務省のエリートが「per day」と口にすることに違和感を持ってしまうのであるが、これは作品全体の「硬さ」に繋がっているように見える。
『プリンセス トヨトミ』(2011年)の監督と『犯人に告ぐ』(瀧本智行監督 2007年)の脚本家がタッグを組んだ作品としてかなり期待して観に行ったが、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(本広克行監督 2012年)のような「化学反応」は起こらなかった。