MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『肉弾』

2015-08-20 00:03:18 | goo映画レビュー

原題:『肉弾』
監督:岡本喜八
脚本:岡本喜八
撮影:村井博
出演:寺田農/大谷直子/田中邦衛/笠智衆/北林谷栄/春川ますみ/仲代達矢
1968年/日本

構図の美しさだけで観ていられる作品について

 大学生だった主人公の若い兵隊が特攻隊員に選ばれ魚雷を備えたドラム缶に乗って海に漕ぎだし、偶然出会った汚わい船の船長から10日前に戦争が終わったと東京湾で聞かされるまでの物語を丁寧に理解しようと試みることは極めて困難なほどに前衛的な作品ではあるが、その構図の美しさだけでも観ていられるのだから岡本喜八監督はやはり一流なのである。
 例えば、ラストにおいて終戦を知った主人公が陸地まで引っ張ってもらおうと船長に頼み、汚わい船とドラム缶を縄でつないで引っ張っていく途中で縄が切れてしまうのであるが、船長は気がつかないまま行ってしまう。突然、昭和二十年から昭和四十三年の盛夏に場面は移り、多くの人々が海岸を訪れて遊んでいる。そこでは水上スキーを楽しんでいる若者たちがいるのであるが、モーターボートに持ち手の付いたロープを持って遊ぶ水上スキーと同じ「フォーム」を23年前の汚わい船とドラム缶のイメージにつなげる皮肉は指摘しておきたい。
 しかし最も驚くべきことは当時18歳の高校生だった大谷直子が、このような訳の分からない映画でデビューし、なおかつとりたてて「必然性」もないのにフルヌードになっていることである。『赤い鳥逃げた?』(藤田敏八監督 1973年)の桃井かおりもそうだが、やはり大物は最初から違うのである。


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