MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『コンペティション』

2023-10-03 00:55:04 | goo映画レビュー

原題:『Competencia oficial』 英題:『Official Competition』
監督:ガストン・ドゥプラット/マリアノ・コーン
脚本:アンドレス・ドゥプラット/ガストン・ドゥプラット/マリアノ・コーン
撮影:アルナウ・バイス・コロメル
出演:ペネロペ・クルス/アントニオ・バンデラス/オスカル・マルティネス/ホセ・ルイス・ゴメス/イレーナ・エスコラス
2021年/スペイン・アルゼンチン

「公式の競争相手」の諍いの「結果」について

 タイトルはもちろん映画祭に正式にエントリーされた作品という意味の他に「公式の競争相手」という意味も込められているはずで、映画の主人公を演じるフェリックス・リベロとイバン・トレスのみならず、映画監督のローラ・クエバスによる「マウンティング」の取り合いが本作の主題なのであろう。だからもちろんイバンが転落死した原因がフェリックスであることをローラは気づいていたはずなのだが、殺人事件に発展してしまっては映画制作は中止に追い込まれ、それを避けるためにローラは気づかぬ振りをしたのである。
 ストーリーは映画のリハーサルが描かれており、完成作は全く出て来ない。それもアリと言えばアリなのだが、どうもベタと言えばいいのかどうか、3人が引き起こすドタバタの面白さがけっこうスベリ気味なものの、一つ言えることはプロデューサーである大富豪のウンベルト・スアレスが現場に任せっきりで、しっかりとしたヴィジョンが無いために巻き起こった悲喜劇であり、その「結果」を見てみたかったという思いは残っている。おそらく映画で初めて「ASMR」をフューチャーした作品だと思うが、作品における奇を衒った以上の「効果」の有効性はよく分からなかった。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/dot/nation/dot-2023031500021


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『バービー』

2023-10-02 00:58:45 | goo映画レビュー

原題:『Barbie』
監督:グレタ・ガーウィグ
脚本:グレタ・ガーウィグ/ノア・バームバック
撮影:ロドリコ・プリエト
出演:マーゴット・ロビー/ライアン・ゴスリング/ケイト・マッキノン/イッサ・レイ/ハリ・ネフ/デュア・リパ/ヘレン・ミレン
2023年/アメリカ

「男性」の重要な役割について

 現実世界から戻って来たバービーが目にするバービーワールドが家父長制にシフトしている場面は興味深かった。『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(サラ・ポーリー監督 2022年)という作品において女性の信徒たちが虐げられているコミュニティの中でオーガストという男性だけは女性たちの味方だったように、男性優位のバービーワールドにおいてもアランだけはバービーたちの味方になってくれているからである。全く性格の違う作品であるにも関わらず、この点は重要なのだと思う。
 ところで本作はマーゴット・ロビーの存在なくして成立しなかったのではないかと思う。例えば、日本で『リカちゃん』の映画化を企画したとして、誰がリカちゃんを演じれば観客が納得できるものになるかと想像するとちょっと今時点では思いつかないのではないだろうか。マーゴット・ロビーが備えるキャラクターとユーモアがあってこそ本作は成功したのである。
 それにしてもスティーヴン・マルクマス(Stephen Malkmus)がルー・リード(Lou Reed)の影響を受けているとは全く気付かなかった。
 エイバ・マックスの「チューズ・ユア・ファイト」を和訳しておきたい。

「Choose Your Fighter」 Ava Max 日本語訳

あなたはあなたの欲望のままに
恋人にでも戦闘員にでもなることができる
人生は難しいものではない
あなたは人生の設計者であり
あなたの好きなように
蝶の羽根でも虎の目でも手に入る
あなたの対戦相手を選べばいいのよ

この世界が小さくなることもある
混乱して公園でさえ歩けないくらいに
でも私はあなたがこの謎を解く手伝いをしてあげれらる
あなたは今のまま完璧なのよ

もしもあなたがこの箱から抜け出て
全ての采配を振るいたいのならば
もしもあなたが優しいかあるいは温和でありたいのならば
黙っていてはダメなのよ
もしもあなたが15センチ進むかパンクしたいのならば
あるいは鮮やかなピンクか黒を着たいのならば
そんなことはあなたにはできないと
誰かに言わせるままにしておいてはいけない
だってあなたにはできるのだから

あなたはあなたの欲望のままに
恋人にでも戦闘員にでもなることができる
人生は難しいものではない
あなたは人生の設計者であり
あなたの好きなように
蝶の羽根でも虎の目でも手に入る
あなたの対戦相手を選べばいいのよ

あなたの対戦相手を選びなさい
あなたの対戦相手を選びなさい

輝くダイヤモンドに囲まれたかわいい騎士
偽装した美人コンテストの女王
あなたが得たものを全て与える時
みんなが目覚めるのよ

もしもあなたがこの箱から抜け出て
全ての采配を振るいたいのならば
もしもあなたが優しいかあるいは温和でありたいのならば
黙っていてはダメなのよ
もしもあなたが15センチ進むかパンクしたいのならば
あるいは鮮やかなピンクか黒を着たいのならば
そんなことはあなたにはできないと
誰かに言わせるままにしておいてはいけない
だってあなたにはできるのだから

あなたはあなたの欲望のままに
恋人にでも戦闘員にでもなることができる
人生は難しいものではない
あなたは人生の設計者であり
あなたの好きなように
蝶の羽根でも虎の目でも手に入る
あなたの対戦相手を選べばいいのよ

あなたの対戦相手を選びなさい
あなたの対戦相手を選びなさい

あなたの好きなように
蝶の羽根でも虎の目でも手に入る
あなたの対戦相手を選べばいいのよ

Ava Max - Choose Your Fighter (From Barbie The Album) [Official Audio]
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/nikkangendai/entertainment/nikkangendai-974248


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『名探偵ポアロ : ベネチアの亡霊』

2023-10-01 00:57:05 | goo映画レビュー

原題:『A Haunting In Venice』
監督:ケネス・ブラナー
脚本:マイケル・グリーン
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
出演:ケネス・ブラナー/ティナ・フェイ/リッカルド・スカマルチョ/ジュード・ヒル/ジェイミー・ドーナン/ミシェル・ヨー
2023年/アメリカ

トリックと心霊現象の塩梅について

 1947年。既に探偵業を引退していたエルキュール・ポアロはベネチアで暮らしていたが、旧友でミステリー小説作家のアリアドニ・オリヴァに誘われてハロウィンの夜にオペラ歌手だったロウィーナ・ドレイクの屋敷で、ロウィーナの亡くなった娘のアリシアの霊を呼び出そうと霊媒師のジョイス・レイノルズを招いて行われる降霊会に参加することになる。他にはドレイク家の家政婦のオルガ・セミノフ、ドレイク家の主治医のレスリー・フェリエと彼の息子の10歳のレオポルド、アリシアの元婚約でシェフのマキシム・ジェラード、ポアロのボディーガードのヴィターレ・ポルトフォリオ、レイノルズの助手のニコラス・ホランドとデズデモーナ・ホランドが参加している。
 ここから簡単にネタバレして書くが、屋敷はかつて孤児院のあったところでペストで大勢の子どもが亡くなっているという過去を持つ。レイノルズはタイプライターを用いて霊と交信するのだが、そこでタイプライターは「M」を打つことでアリシアの死が「殺人(Murder)」であることが分かるのだが、その直後に女神像の槍の上に落下してレイノルズが亡くなり、ポアロが犯人を捜し始めるのである。その内に音楽室でフェリエが背中を刺されて殺されてしまう。
 殺人の経緯を書いていくが、アリシアはマキシムと結婚するつもりだったのだが、母親のロウィーナの過干渉で婚約は破棄され実家に連れ戻された後は、体調が優れなかったのだが、それはロウィーナは娘に覚醒剤の作用があるシャクナゲの蜂蜜を紅茶に入れて飲ませていたからなのだが、母親が不在の時に発作を起こしたアリシアに、蜂蜜の成分を知らなかったオルガが良かれと思って大量に紅茶を飲ませて死なせてしまい、オルガが取り乱していなくなった隙に、真実を隠すためにロウィーナはアリシアをバルコニーから投げ落として転落死に見せかけたのである。
 ところが脅迫状が届いたことから、ロウィーナはアリシアを診断したレスリーと、アリシアの死後、受け取った手紙に誰も知らないアリシアの愛称である「アスパシア」と書いてきたレイノルズを殺す計画を立てたのである。レイノルズは背後から押して殺し、強制収容所でトラウマを抱えて精神的に衰弱していたレスリーには「他殺に見えるよう偽装して自殺しなければ、息子を殺害する」と脅したことで死んだのである。しかしそもそも脅迫状を書いてロウィーナから金銭を受け取っていたのはレスリーではなく息子のレオポルドだったのである。ポアロは気づいたが結果的に父親を殺されたまだ10歳の子どもなので見逃したのである。
 この交霊会はそもそもオリヴァの小説のネタ作りにレイノルズとポルトフォリオが一緒になって仕組んだものだったが、屋上庭園で栽培されているシャクナゲよる幻覚で悩まされながら謎を解いたポアロでもなお原因が分からないことがある。例えば、勝手にタイプライタ―が「M」を打ったり、シャンデリアが突然落ちてきたりするのだが、クライマックスにおいてポアロに屋上に追い詰められたロウィーナがアリシアの亡霊に引っ張られて落下するシーンを見た時、これはトリックと心霊現象の塩梅が絶妙だと妙に納得させられたのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/crankin/entertainment/crankin-13355310


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