「上映時間約2時間半があっという間に過ぎて行った」と『十一人の賊軍』(白石和彌監督 2024年)のレビューに書いたばかりなのだが、敢えてもう一度書かざるを得ないほど良く出来ていた。さすがにハリウッド映画の制作費の高さによるCGの多用と人海戦術の前に『十一人の賊軍』の画面のスカスカ感は否めない。 しかしストーリーに関して言うならば、本作のゲタとカラカラの双子の皇帝は頭が悪く、主人公のルシアス・ヴェルスとの対比がはっきりしており、分かりやすいと言えば分かりやすいのだが、『十一人の賊軍』の新発田藩の藩主の溝口直正はまだ子供だから仕方がないものの、悪役であるはずの城代家老の溝口内匠が権謀術数を駆使して領地を守るための葛藤の描写は本作よりも優れているのではないだろうか。 それよりも気になるのは戸田奈津子による字幕翻訳で、見間違いでなければ「Port of Rome」も「Outskirts of Rome」も「ローマの郊外」と訳されていた。良いのか?
原題:『Venom: The Last Dance』 監督:ケリー・マーセル 脚本:ケリー・マーセル 撮影:ファビアン・ワグナー 出演:トム・ハーディ/キウェテル・イジョフォー/ジュノー・テンプル/リス・エバンス/ペギー・ルー/アラナ・ユーバック/スティーブン・グレアム 2024年/アメリカ
人間とエイリアンの関係について
あれほど仲が悪かったはずの主人公のエディ・ブロックとヴェノムの関係を知っている者としてはラストはつい涙腺が緩んでしまった。 エイリアン愛好家のムーン家を登場させたことが興味深い。かつて『E.T.』(スティーヴン・スピルバーグ監督 1982年)などで人間とエイリアンの平和な交流が描かれていたが、もうそのような関係は夢物語なのだと本作で示されたような気がする。 それにしても映画におけるデヴィッド・ボウイの曲の採用率の高さには驚いてしまう。本作も「スペイス・オディティ(Space Oddity)」が使用されているのだが、エディがヒッピーのマーティン・ムーンと別れた後に口にする「all time low」というフレーズは「スペイス・オディティ」の続編と言われている「アッシュズ・トゥ・アッシュズ(Ashes to Ashes)」から引用されており、芸の細かさがうかがわれる。 マルーン5の「メモリーズ」を和訳しておきたい。