俺の大学時代の恩師がいつも言っていた。
「良い料理人は材料を選ばない」・・・と。
「料理人」ってのはあくまで喩え話であって、俺の母校は料理学校でも何でもないよ、念の為。
要するに良い仕事人は限られた条件の中でも良い仕事をする、条件が悪くてもウデでカバーしてしまう・・・という意味である。
コレの正反対の言葉で「良い料理人は良い包丁を選ぶ」ってのもある。包丁じゃなくて材料だったかもしれないが、カンベンしてください。
コッチは良い仕事の為には良い条件が必要になるとか、良い仕事人は良い道具や材料を見極める事が出来るとか、仕事が始まる前から仕事は始まっている・・・というような意味。
個人的にはどちらも正しいと思う。
「良い仕事の為には良い材料と道具を使い、高い技術力によって最良の結果を引き出す事ができるのが、腕の良い仕事人である」というワケだ。
ところがここにも逆説がある。
仕事である以上はお客様のご予算を考慮した事をやらなければならない。良い材料を使いすぎた結果に予算をオーバーしてしまうのは、プロ失格である。
さて、過去の記事に何度も書いている事であるが、ペペロンチーノを作る上でニンニクの風味を引き出すのは非常に難しい。
調理法を工夫しながら、一度は一房を丸々一食に使用してみた事もあったが(笑)、ニンニク味になるだけで何故か風味は思い描いたほどは出なかった。
俺が今まで歩んできたペペロンチーノ街道では、常に中国産のニンニクを使用してきた。それは俺のペペロンチーノはリーズナブルである事を目標としているからである。
スーパーに並べられた中国産ニンニクの隣には、必ずヤケに値段の張る青森産のニンニクが置いてある。
中国産は一袋3房入りで¥100弱。
対する青森産は、一房で¥300~¥400。
その差10倍以上。
一体何が違うのだろうか?
冷静に考えて、全く同じ物が産地の違いだけで10倍の価格差を生じるとは考え難い。
例えば我々バイク乗りには有名な、某国によるジャパンブランドのコピーバイクや、コピーパーツ。
あれは似ているように見えてもクオリティにかなりの差があるとの事だ。価格差の代償が品質って事になる。
俺が大好きな映画「バックトゥザフューチャー」で、主人公マーティを乗せたタイムマシンに改造したデロリアンが過去に行き、故障してしまった時の事。
マーティはその時代のドク、即ちタイムマシンを発明する前の発明者の所へ赴き、デロリアンの修理を試みる。
未来の自分が発明したタイムマシンを修理するドクは、壊れた部品を見て言った。
「コレは日本製だ、壊れるのは当たり前だ」
この映画は1985年の物で、マーティが行った時代は更に30年前・・・つまり1955年。この時代はわが国の製品も信頼性は皆無であったのだ。
そこでマーティは答える。
「僕の時代は何でも日本製が一番なんだ」と。
いずれ世界の工場、中国の製品もそう云われる時代が来るのかもしれない。
だが現在の中国製品と日本製の差は、品質のみならずパッケージへの注射針の穴の有無など、原材料に「悪意」が含まれている可能性すら存在する。
ペペロンチーノ街道を共に旅する中国産ニンニクについては「よもやそんな事はあるまい」と信じ切って、苦楽を共にしてきた。
果たして何が違うのか?
以下は全てWEB上のみにて収集した情報を、俺なりにまとめた物である事をご理解いただきたい。
中国産、青森産と、産地のみで区分を表示されているが、実は両者は品種そのものが異なるのだそうだ。
中国産の物は在来種であり、青森産(ほとんどが田子町産)は「ホワイト六片種」という独自の品種のようだ。
JA田子町HP(くまなく熟読される事を強くお勧めする・・・なかなかアツいHPである)
実際に買ってきた青森産のニンニクと中国産の物を比べてみる。
中国産は外周に大きめの実があり、内周にも小さな実がある。
コレに対して青森産は遥かに実が大きく、中国産の様に二重になってはいない。
ア、アレ・・・? 六片ある筈が5片しか・・・(笑)。
両者の違いを見極める為、今までと全く同じ方法にてペペロンチーノを作ってみた。
中国産を使用してきた今までは、一食分に対して2~3片、あるいはそれ以上の量を使ってきたが、青森産は実が大きいので1片で充分である。
過去の記事に紹介した調理法との違いは、砂糖を軽く一さじ入れている事、スライスしたニンニクを初期段階で炒めた後に取り出して、カリッとした状態でトッピングとして使用している事。それと、バジルをパセリに変更した事。バジルもパセリも乾燥の瓶詰めの物なので、当然香りは異なるものの強烈な違いは無い。
なるほど、確かに青森産のほうがニンニクの風味が出るようだ。
中国産で失敗し続けたローストガーリックを、青森産の物でトライしてみよう。