ヌタ場になった水の枯れた溜池の底は、誰が見ても足跡がボコボコあるから「猪が来た」と理解できるが、通り道は意識しないと見過ごしてしまい易い。
悔しい事に、こちらが手入れをしている「人間様用」のトレイルを堂々と利用していることだ。トレイルでなくても藪を払って通りやすくしたところも遠慮も感謝もしないで通っている。
泥浴びした後、滴り落ちる泥が,歩いたところに白く伸びているし、杉の幹には身体を擦り付けた跡まで泥の痕跡で明白だ。密生した草藪の中も意に介さないで獣道を作る猪だけど、やはり選択肢があれば快適な通路を歩くのだ。決して猪突猛進ではない。
この猪の由来は「飼育猪」である、というのが定説だ。昭和の後半までは全く野生の猪は存在していず、飼育舎が台風で破損して逃げたのが繁殖したのだそうだ。「意図的に放獣した」と言う人もいる。もともと市街地に囲まれた独立した丘陵地だから外部侵入説は無理がある。