浸食溝を埋め戻した法面は田土の下にあった基盤土壌だから種子や細根など混入していない。自然の植生回復に委ねるのも一つの方法であるが、梅雨末期の降雨による堤の細りが心配で、被地植物の定着を早める事にした。
棚田跡の植生のある表土をスコップで板状に掘り取り、これを瓦の様に法面に重ね、叩き板で圧着したのである。これで早い段階から植生が出現するはずだ。泥水地全体の修景が済んで、トンボが乱れ飛ぶ空間を眺めていると、思わず放心状態になるが、疲労困憊していても他人には理解できない充足感がある。
これはまさしく極楽トンボそのものなのだろうが、実感としては「極楽トンボでいることも楽でない」。土と戯れた後は、帰路にドリンク1本を渇望してしまう。