「朝鮮総督府官吏 最後の証言」(西川清 述 「桜の花出版」編集部編 2014.8)を読む。
証言者である元・朝鮮総督府官吏・西川清氏は、本書が出版された時点で99歳だった。今もご健在なのだろうか。
本書の内容に沿っていると思われる西川氏の証言は、幸い、映像でも見ることができる。(下記参照)
西川氏は、本書の中で、「従軍慰安婦」は絶対に存在しなかったということを強調し、日本統治下朝鮮における朝鮮総督府の組織・機能、官吏の役割、郡役所における仕事、日本人の朝鮮人の関係などを詳述している。日本統治時代の朝鮮についてわからない点があれば、「朝鮮は戦場ではない」「行政の幹部に朝鮮人がいる」という二点に留意してほしいと、西川氏は指摘する。(本書 p.99)
前書きに相当する「取材記」には次のような一文がある。
「従軍慰安婦問題などは記憶が鮮明なはずの終戦直後には話題にすらならなかった。何故なら当時は実態を知っていた人が日韓で数多くおり、強制連行などが嘘であことがすぐに分かってしまうからである。初代大統領の李承晩や日韓国交正常化時の朴正煕・元大統領も問題にしていない。この事実が何より真実を雄弁に語っている。」(p.7)
本書における西川氏の証言は、実体験に基づいて、その真実を語っている。戦争体験者が激減した現在、このような証言は大事に語り継がれるべきだろう。
私自身、朝鮮半島にはさしたる関心もなかったのだが、台湾の歴史に興味を持つにつれ、台湾総督府の統治が近代的合理主義(科学技術を尊重する合理主義)、法治主義に基づく、真摯な統治だったことを知った。台湾総督府がそうであれば、朝鮮総督府が正反対のことをやったなどとは、到底考えられない。そこで本書を読んで、改めて朝鮮近代化に果たした朝鮮総督府(すなわち日本)の役割を認識した。
なお、本書のシリーズには、NHKスペシャル「アジアの”一等国”」でインタビューを受け、その発言の一部を都合よく切り貼りされたとして、NHKを名誉棄損で訴えた柯徳三氏(台湾日本語世代の医師)の自伝も入っているので、本書の内容も十分に信頼に足ると考えられる。本書を「朝日」の読者にもぜひ読んでいただきたい。