今回は、「㉔多羅尊観音(たらそんかんのん)」を描きました。
原型の起源は古く、広範囲の神々と結び着いています。雲の上に立ち、右手は衣裳の中に入れて胸の下、左手はその下に置いた慈母神として崇められた女神であります。多羅は眼精、瞳を意味し、救いの母と訳されているように、慈母のやさしい眼で衆生を彼岸へ導き、煩悩の苦海より救ってくださいます。
観音菩薩の救済に漏れた衆生をも残らず済度する菩薩としてチベットで広く信仰されています。
㉔多羅尊観音(たらそんかんのん) インド由来の女性格の観音菩薩です。インド神話の女神が源流で、チベット密教で四大元素の「風」を象徴する本尊として最重要視されるターラーと同体です。多羅はその音写で、「目」を意味します。観音菩薩の涙から生れ、右目の涙が白ターラー、左目の涙が緑ターラーとなったとされています。
後期密教では観音菩薩の心から生まれたとされ、別名を多羅眼観音、多羅菩薩と呼びます。胎蔵界曼荼羅の観音院では右列5番目に位列しています。戦闘神としての性格が強く、十方の衆生の苦しみを除くため、魔を悉く調伏したため救度速勇母とも呼ばれます。
『法華経』普門品では「或値怨賊繞 各執刀加害 念彼観音力 咸即起慈心(或いは怨賊の繞に値し 各刀を執りて害を加えんとす、彼の観音力を念ぜば、咸な即ち慈心が起る」に対応しています。
中国の民間伝承では「北宋末に金軍が朝廷に攻め込んできた。敵軍に捕らえられた息子達の帰りを、毎日涙を流しながら待つ老婆が遂に失明しまった。それを哀れんだ観世音菩薩が赤い脚をした医者に化身して老婆の目を治し、息子たちを無事帰宅させた。」と言われています。 |
したっけ。