私が鹿児島へ来る前に東京の葛西臨海水族園で飼育のアルバイトをしていた。その葛西臨水がバショウカジキの若魚収集の為に我が漁協に来ている。もうだいぶ前にもバショウカジキの飼育展示の為収集に来たのだが、その時は幼魚を採集し搬出したのだが展示にまでは至らなかった。幼魚は非常に弱いうえ水槽の壁に直ぐに衝突してしまう。そこである程度成長すれば体力もあり水槽の壁も認識するのではという事で、今度は成長した若魚を収集し飼育展示を目指す。漁協に円形の水槽を構え、漁協の定置網に水族館職員が乗船し収集を行っている。今日はうちの定置網でバショウカジキの若魚が数個体入網。何も準備はしていないが一応採集し、活かした状態で持ち帰る。港に着くと漁協の定置網はまだ帰港してなく、水族館職員も不在。それでも急いで水族館が構えた円形水槽に入れる。3個体入れるが2個体は直ぐに水槽の底で横になってしまう。残る1個体は泳いでは入るが壁に吻を擦りながら泳ぐ感じである。水族館では非常に柔らかい生地を使ったタモ網で掬うのだが、うちの船にはそのようなタモ網は無く、普通のタモ網で掬ったので体表がスレて弱ってしまったと思われる。バショウカジキもマグロと同様に体表は非常に弱く、扱いは非常に難しい。その後、漁協定置網が帰港し、後は水族館職員に任せる。結局泳いでいた個体もその後斃死してしまう。やはりそう簡単にはうまくいかないのである。
円形水槽に入れたバショウカジキの若魚