お魚三昧生活

鹿児島の定置網で獲れる魚や市場の魚、鹿児島大学総合研究博物館魚類ボランティア(魚ボラ)の事などを紹介します!

悩ましいニシキカワハギ属幼魚

2022年05月30日 | 市場
 今日は定置網漁の水揚げ作業後、天気が悪くその日の仕事が終了。その後、市場内を散策しているとお隣の定置網が漁を終え帰港する。水揚げ作業が始まり、何か面白い魚がいないかと選別作業を手伝う。するとニシキカワハギ属の幼魚を発見。体色から自分が知るニシキカワハギ(ブログ2017 5.1)ではない。となるとこの時点で初確保決定。種名までは覚えていないがニシキカワハギ属の中に体色が前後で別れている種がいるのは知っていたのでそれだろうと思う。家に帰り調べると直ぐにヌリワケカワハギと判明。一応検索図鑑で調べるとヌリワケカワハギもニシキカワハギと同じく鰓孔の周辺に暗色斑があるとなっている。更に第一背鰭棘の後側面に下向きの微小棘が多数あるとなっている。先ず暗色斑だが、この個体の状態があまり良くないうえ、まだこのサイズではニシキカワハギでも現れていなかったので確認出来ないかもしれない。だが、背鰭棘はニシキカワハギと同じで微小棘が多数ではなく、下向きの強い小棘が10本までは確認出来ないが並んでいる。となるとヌリワケカワハギではないのだろうか。となるとジョンストンニシキカワハギの可能性が出て来る。だが、ジョンストンカワハギは珍しいみたいで情報が少ない。ジョンストンカワハギは胸鰭の基部に暗色斑があるらしい。この暗色斑も状態が悪い為か幼魚な為か確認は出来なく結局迷宮入りとなる。ここで諦めようかと思ったがネットで色々と調べるとFishBaseでランドール氏が撮った沖縄産のヌリワケカワハギの写真に目が留まる。背鰭棘を見るとこの個体と同じように強い小棘が並んでいるのが確認出来る。という事でこの個体はヌリワケカワハギと自分では同定。でも、FishBase内のヌリワケカワハギの写真の中でもこの写真だけである。こうなって来ると逆に背鰭棘側面の小棘が同定のキーとなるのだろうかと検索図鑑すら疑ってしまう。調べれば調べる程わからなくなってしまう。結局はいつもの魚ボラ任せとする事に。



ニシキカワハギ属幼魚の背鰭棘




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

久し振りのメバル属幼魚

2022年05月28日 | 採集
 今日は夜間採集の日。いつもの港へ行くと車が止まっており、岸壁の端の方で釣りをしている。いい歳してタモ網を持って魚を掬っている所を見られたくないうえ、最近は収穫もないのでタモ網を持たずに懐中電灯だけでサッと見て帰ろうかと思う。釣り人から離れた場所から海中にライトを当ててみる。すると、見覚えのあるフォルムの魚を発見。メバル属の幼魚のように見える。掬ってみないとわからないものの、メバル属の幼魚となれば採集せずにはいられない。という事で車までタモ網とバケツを取りに行き、採集に取り掛かる。そして難なく採集。見るとやはりメバル属の幼魚である。メバル属の幼魚はこの港では4年振りの採集となる(ブログ2018 4.14)。更に近くにもう1個体見えそちらも採集。こうなれば形振り構わず釣り人の近くまで散策する。結局メバル属の幼魚2個体を採集し終了。今回は釣り人だった為、少しは共感してくれるだろうと思うも、この歳ではやはり一般の人にはタモ網片手に魚を採っている行為は見られたくないものであり、今一番の採集の難しさである。

今回もいつものネコ登場



メバル属幼魚



ニザダイ幼魚



メバル属幼魚1



メバル属幼魚2



チョウチョウウオ幼魚



イソギンポ






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トリクチス幼生

2022年05月27日 | 定置網
 今日は定置網漁を終え、市場で選別作業をしていると、お隣の定置網の方が小さな魚を持って来る。見るとチョウチョウウオ科のトリクチス幼生の様に見え、吻が尖っているのでハタタテダイの稚魚かなと思う。だが、いつも見るハタタテダイとは違い何だか全体的に黒っぽい感じである。鮮度の問題かもしれないが折角持って来て頂いたので確保し持ち帰る。家に帰り虫眼鏡でよく見ると鮮度的には問題なく、ただ体色が黒っぽいだけである。ハタタテダイのトリクチス幼生は今までにたくさん見ているが、このサイズだと既に体色が黒と白のストライプであるが、この個体に白い部分はない。更に臀鰭も後半のみ黒いがこの個体は臀鰭全体が黒い。となると、この体型から見てハタタテダイ属の別種ではないだろうか。体側や臀鰭が黒いとなると、以前に採集したこともあるツノハタタテダイ(ブログ2011 11.4)くらいである。今までにハタタテダイ属でハタタテダイやムレハタタテダイ以外のトリクチス幼生は見たことは無く、ネットや図鑑で探しても見つからず、容姿はわからない。一応、背鰭は12棘で背鰭軟条は透明であり腹鰭、臀鰭が黒く一致する。だが、決め手がないうえ、ひょっとしたらハタタテダイ属ですらない可能性も考えられ、結局は同定出来ず諦め、いつもの魚ボラ任せとする。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

苦手なウツボ科魚類

2022年05月26日 | 定置網
 今日は定置網漁で久し振りにウツボではないウツボ科魚類が獲れる。今までに何度も獲れた事がある種かもしれないが自分が同定出来ないので一応魚ボラの標本用に確保する。家に持ち帰る前に一応写真に収める。家に帰り冷凍保存する為ビニール袋に個体を入れる。体長が長いものの体は柔らかく、意外と冷凍するにも嵩張らずに済む。ダメ元で同定を試みると検索図鑑ではオナガウツボ辺りである。だが、2020年にオナガウツボの近似種が新種記載され、ゴボウウツボと標準和名が提唱される。ゴボウウツボはうちの海域でも既に確認されており、その可能性もある。肛門の位置が違うらしいが既に冷凍中という事で確認することも出来ず、あとは魚ボラ任せとする。だが、オナガウツボかゴボウウツボかと考えているものの意外と全く別種の恐れもある。それほど自分ではわからず、手を付けたくないウツボ科である。










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トビエイの標本新たに初登録

2022年05月24日 | 魚ボラ
 先週確保したトビエイ(ブログ2022 5.16)を漁協の冷凍庫に入れている。だが、本来は冷凍庫ではあるが調子が悪く凍らすことは出来ず、冷蔵庫状態。冷やしているだけな為、エイを触ると柔らかい。数日のうちに大学へ行くだろうと思っていたがもう1週間も経ってしまう。今日は所用で鹿児島に行く予定である。昨日確保したミナミキントキ(ブログ2022 5.23)もあるので鹿大にも寄ろうと考えている。トビエイはもう腐ってしまっただろうと諦めていたが、袋から出して状態を見ると臭いや汚れた液は出ておらずギリ大丈夫そう。という事でトビエイも持って行く事に。用件が済むまでもトビエイが車の中で悪臭を発しないか心配であったが何とか持ちこたえ、無事に大学に到着し、撮影に標本登録してもらう。昨年の11月にうちの定置網で得たトビエイの標本がスミレトビエイとなってしまったので、これで再度トビエイ標本初登録となる。



トビエイ





ミナミキントキ



上からの撮影用





トカゲエソ



トウザヨリ


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アカイサキ

2022年05月24日 | 市場
 今日は定置網漁を終え、市場で水揚げしていると綺麗な見慣れない魚が並んでいる。アカイサキである。アカイサキはここの市場では年に一度揚がるかどうかという程滅多に見ることが出来ない魚である。よく見ると口から胃袋が出ており、かなり深場で釣って来た感じであり、そのような漁師さんが少ないのである。その為、魚ボラの標本用にもまだ確保していない。アカイサキは雌雄で体色が違うのだが、見れば雌雄共に揃っており絶好のチャンスである。市場職員に話を聞くと滅多に揚がらないので値段がどうなるかわからないとの事。水揚げ前なら1個体ずつ確保出来るのだが既に水揚げ後で、伝票の関係で雄は雄だけでひと山、雌は雌だけでひと山で並んでいるので確保するとなると1個体だけとはいかず、ひと山取らなければならない。雌雄でひと山ならまだしも雄、雌と別れての山となっている。仲買も買わないと値段が付かないので全て取る訳にもいかず、確保するとなると雄全てか雌全てのどちらかとなる。どちらかとなると自分としては雄個体を欲しい。でも、雄は5個体もあり多過ぎる。雌が2個体でサイズも小さくお手頃となかなか思う様にはいかない。出来れば雌雄揃って確保したい思いもある。最近は珍しい魚を欲しがるお客さんがいるみたいで、変わった魚に驚くような値が付くことがある。今回もその可能性が考えられる。何だかんだ考えて結局今回は標本用に確保するのを諦める。仕事が終わってから市場職員にアカイサキがいくらだったか値段を聞くとキロ単価がめちゃくちゃ安かったみたいで確保しなかったことを後悔する。後で考えてみればアカイサキはうちの市場で珍しいだけで他の市場ではそこまでもなく、仲買にしてみれば珍しくはなく他所では手に入る魚ということであろう。次回に期待したいが何時になるのだろうか。

アカイサキ



アカイサキ(雄個体)



アカイサキ(雌個体)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

残念 ミナミキントキ

2022年05月23日 | 市場
 今日は定置網漁を終え市場で水揚げ作業をしていると、大きめなキントキダイの仲間が揚がっているのが目に付く。背鰭・臀鰭軟条を見ると赤い斑紋の様なものがあり、この個体が以前からどの種になるのか気になっていた。現在魚ボラに丁度キントキダイ科を研究している学生がいるので、調べてもらおうと思い標本用に確保する。家に帰り一応ホルマリンは使わず展鰭して写真に収める。自分なりに同定してみると魚ボラOBが報告したミナミキントキの文献を見つける。文献内でこの赤い斑紋には触れていないが、ほぼ一致し、さらに掲載されている写真も各部分が一致。この個体がミナミキントキとわかってしまう。ミナミキントキはうちの定置網でも幼魚や若魚が獲れるが体色はもっとオレンジ色で体表の感じも違い、この個体がミナミキントキであるとは思ってもいなかった。何だかあっさりとわかってしまいちょっと残念。珍しいのであればそのまま大学へ走ろうとも考えていたが魚ボラの標本用に冷凍保存となる。

ミナミキントキ





背鰭第1~3棘間の鰭膜上に明瞭な黒斑がある



気になっていた背鰭軟条の赤い斑紋


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コシナガ確保

2022年05月18日 | 定置網
 今日の定置網漁で胸鰭の長いマグロが数個体で泳いでいるのを確認。小さなキハダだろうと思う。網を絞り取り上げるとキハダではなく値段の安いコシナガであり、みんなが落胆する。そのような状況の中、自分だけはチャンスと思う。コシナガはこの前刊行した薩摩半島沿岸の魚類図鑑(ブログ2022 2.25)の作成時に標本写真がなく、更に市場で撮った写真もあまり良いものが無い為、仕方なくその中から選んで掲載した次第であり、標本を探していた。今回は5個体入網したので、その中から一番小さな個体を選び魚ボラの標本用に確保する。サイズ的にもギリギリうちの冷凍庫に入るので冷凍保存し今度大学へ行く時に持って行く予定。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トビエイ確保

2022年05月16日 | 定置網
 今日は定置網漁を操業中、水面でトビエイが泳いでいるのを発見。トビエイは魚ボラの標本用に探していたエイなので確保する。サメやエイ類はサイズが大きな為、標本を確保するのが大変な為、数多くは確保していない。このトビエイも今までにうちの定置網では1個体のみ標本登録されていた。薩摩半島沿岸の魚類図鑑(ブログ2022 2.25)を制作している時もトビエイはこの個体を掲載していた。ところが昨年の11月にオーストラリアの固有種とされていたMyliobatis hamlyni Ogilby, 1911が日本にも分布していることがわかり、スミレトビエイと標準和名が提唱された。それにより、うちの定置網で得られた個体もこのスミレトビエイと再同定されてしまい、トビエイの標本が無い状態となってしまう。幸いにも図鑑には範囲内の他所から得られた標本を載せ、トビエイを掲載することが出来、事なきを得る。スミレトビエイは体盤に斑紋が無いということなので、今回泳いでいる姿を見て斑紋が確認出来たので直ぐにトビエイとわかった。これでトビエイの標本も確保出来たのだが、この個体は今まで見て来た個体と比べると尾部が短い感じがする。先端を見ると切れた感じではないが、以前に何かの拍子に切れてしまったのだろう。トビエイの標本を確保したものの完全体ではないので、これからもトビエイの標本探しは続くのである。










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地元イベント

2022年05月03日 | 日記
 ゴールデンウィーク突入で通常は休みである。だが、今日は地元の大きなイベントがあり、そこで鮮魚販売がある為、定置網漁に出漁。時化の中、操業し水揚げ後、イベントスタッフとしての仕事をする。私の担当は地魚鑑賞プールでの魚の説明を任される。また、この前確保したシロシュモクザメも展示する。ここ数日での定置網漁で得た活魚をプールに泳がせたのだが、その魚がイサキやイスズミ、メジナなど地味な体色の魚ばかりで来てくれたお客さん達に喜んでもらえるだろうかと不安であった。救いなのがエイラクブカと棘を取り除いたアカエイがいたことである。見に来た子供達はやはりサメやエイで興奮した感じでちょっとホッとする。だが、そこは子供である。見るだけでは済まないらしく触りたいという事でタモ網で掬い触らせてサメ肌を体感してもらう。更にそれでも物足りないのか、仕舞いには私が持っているタモ網も子供達に取られ、魚捕りが始まる始末である。鑑賞プールという事であったが最後には子供達もプールに入り魚捕りプールとなる。最近の子供達は自然に興味や関心がないかと思っていたが、泳いでいる魚を見ればやはり捕りたくなる願望があるのだと安心し、こちらも嬉しくなる。イベントが終わる最後まで大いに賑わった地魚鑑賞プールとなった。またお隣のブースでは日頃からお世話になっている鹿大水産学部のO先生や学生による深海魚コーナーのブースがあり、私も楽しみにしていた。地元の自治体も協賛している鹿児島のうんまか深海魚「かごしま深海魚研究会」による深海魚の展示紹介やO先生による深海魚講座などが行われ、こちらも多くのお客さんで賑わっていた。こちらのコーナーに先日定置網で獲れ、生かしていた深海後のカガミダイ幼魚も展示する。私も展示や講義をよく見たかったのだが持ち場のプールも忙しく、隣のブースにも拘らずチラ見くらいしか出来なかった。ゴールデンウィークという事で多くのお客さんが来るだろうと思っていたが、楽しんでもらえるだろうかと不安であったが大盛況で終えることが出来、本当にほっとする。鹿大水産学部の皆さん、ご協力ありがとうございました。終了後、カガミダイ幼魚は無事に魚ボラの標本として確保したものの、シロシュモクザメは多くのお客さんが触り、写真も撮ってもらっていた為、身も弱り、廃棄処分となりました。

地魚鑑賞プール



お客さんに触ってもらったシロシュモクザメ



最後は子供達もプールの中に入り採集



深海魚コーナーも大盛況













深海魚講座

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする