今日は作業を終え倉庫にいると市場職員から電話が来る。隣の漁協の定置網でリュウグウノツカイの様な魚が獲れ、市場に持ってくるとの事である。見に行くと既に大きな個体が水揚げされ市場内に横たわっている。見るとサケガシラである。サケガシラは日本各地の定置網でよく揚がり珍しい感じではない。だが、ここではよく似るテンガイハタは小さな個体が何度か揚がったものの、サケガシラはこの個体がまだ2個体目と非常に珍しく、リュウグウノツカイよりも稀である。この個体は1.5m位であるが、前回揚がったのは15年も前で今回の個体よりも遥かに大きく魚ボラの標本として確保することが出来ていない(
ブログ2007 6.23)。その為、今回刊行された薩摩半島沿岸の魚類図鑑(
ブログ2022 2.25)には掲載されていないのである。その為、標本用に確保したいところではあるが、この個体を確保するとなると今日中に大学へ持ち込まなければならないが、今日は行く事が出来ない。更に最近はこのような大きく珍しい魚の需要があり、仲買が欲しがり売れるのである。今回も仲買が既に目を付け、電話でやり取りをしている。この個体は10数キロあり、金額が高くなるのは必至であり確保するのは諦める。入札結果はキロ単価が破格の千円を超え、漁獲した定置網の方としても捨てずに市場に持ち込んだ甲斐があり大変に良い結果となり、改めて手を出さなくて本当に良かったと思う次第である。サケガシラはリュウグウノツカイなどと同様にプランクトン食と思っていたが、この個体を見ると下顎に大きな犬歯が密集しているではないか。家に帰りネットで調べると、小魚やイカを食べると推測されているみたいで胃の中からイカのクチバシが多数見つかっているらしい。口が伸びる構造となっているので、小魚やイカを一瞬にして素早く捕食するものと思われる。これだけ大きな個体であるが、まだまだ謎が多い魚である。
口が伸びた状態
下顎内に犬歯が密集している
尾鰭は確認出来ない