お魚三昧生活

鹿児島の定置網で獲れる魚や市場の魚、鹿児島大学総合研究博物館魚類ボランティア(魚ボラ)の事などを紹介します!

夜間採集

2009年05月30日 | 採集

夜間採集は普段は休みの前夜(土曜日夜)に行なっているが、今回は訳あって今日が仕事で明日月曜日が振替休日となったので、日曜の夜に行なう。日曜の夜と言っても日付けは既に月曜日になっていたかも知れないような時間帯。今年は夜間採集での収穫が無く、ネタが無いのでブログに書いてないが、一応は行なっている。今日も「もしかしたら」とついつい思い、期待して足を運んでしまう。港に着くと風が吹いていて、水面が少し波立ち海中が見え難い。今日も駄目かと直ぐに諦めてしまう。懐中電灯で水面を照らすと何かが動いたので掬ってみる。すると透明な魚が1尾捕れる。クロハギ属の幼魚と思われる。クロハギ属の幼魚は定置網でたまに獲れるが夜間採集では初めてである。定置網での採集の場合は選別台の上で見つけることが多く、既に死んでいるうえ冷やされて体も白く濁っている。今回は泳いでいるところを採集したので体は透明で綺麗である。この状態で写真を撮りたいので生かした状態で持ち帰る。体が白く濁らないように氷水で絞めたら直ぐに水から出す。鰭立て作業も体側にホルマリンが付かないように注意する。細心の注意を払いながら撮影する。その後同定となるが、今までに定置網で捕れたクロハギ属の幼魚も同定したことが無い。まだ幼魚なので形質が成魚と異なると思われ今までも同定しなかった。という事で今回も同定は魚ボラに任せる。



魚ボラでオハグロハギAcanthurus thompsoni(Fowler,1923 )と同定されました。
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息子の採集 ナマズ稚魚

2009年05月19日 | 採集

今日の夕方、外で遊んでいた息子が急いで帰ってくる。近くの田んぼにナマズの子どもがたくさんいるから網を貸してくれと言う。オタマジャクシと間違えているのだろうと思いながら網を渡す。だが、ナマズが用水路から田んぼに入って産卵するところをテレビで見たことがある。さらに子どもとは言え、うちの子がナマズの子とオタマジャクシを間違えるだろうかとも思う。戻ってきた息子の持つバケツの中を覗くと確かにナマズの子である。ナマズの幼魚となれば魚ボラの標本用にも欲しい。息子にそれを伝えるとみんな水槽で飼うとの事。それならもう一度捕りに行こうと息子に採集場所を案内してもらう。田んぼに行くと既に田植えも終わり、用水路の水が閉ざされていてあちこちで水溜りになっている。その一番大きな水溜りにナマズが群れていたそうだ。何度もかき混ぜた為か、まだ濁っていて中の様子は分からない。その水溜りをもう一度網で掬ってみるとナマズの幼魚が1個体捕れる。何度も掬って数個体確保する。ナマズの幼魚がいた水溜りはここだけで、他の水溜りはオタマジャクシばかりであった。そのオタマジャクシも少し捕って帰る。家に着くと捕ってきたナマズの幼魚の腹部がみんな大きくなっている。帰る間に一緒に入れたオタマジャクシを食べてしまった。そういえばナマズを掬った水溜りにオタマジャクシはいなかった。全て食べられてしまっていたのだろう。それにしてもナマズはオタマジャクシよりも少し大きいだけ。見た目では食べられる大きさではない。この食欲は恐ろしいくらい。結局再度採集したナマズも水槽で飼いたいということで全て水槽に入れる。水槽に何匹いるかは把握していないと思うので、息子には黙って今度の魚ボラに数個体持っていき標本登録しなければ。
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ついに来た~っ リュウグウノツカイ

2009年05月18日 | 定置網


それは突然訪れた。定置網の水揚げも終わり、市場内を覗いていると他の港から魚を運んできた漁協の職員に呼ばれる。他の港とは私がいつも夜間採集を行なっている港である。そこの港を利用している定置網の漁師さんから私に魚を渡してくれと頼まれたそうで、魚の入ったバケツを預かる。中を覗くと鳥肌が立つ。リュウグウノツカイである。しかも尾部もしっかりと残っていて各鰭もあり、完全な個体である。今までにリュウグウノツカイは何度も手にしているが、その全ての個体に尾部は無く不完全な個体ばかりである(ブログ、2007 11.24)(ブログ、2008 5.23)。サイズも標本としては手頃なサイズで60~70センチくらい?。標本を提供して下さった漁師さんに感謝しつつ、とにかく体が折れないように、鰭が切れないようにと注意しながらスチロール箱に詰める。直ぐにでも大学に持ち込み標本登録したいところであるが、今日は夜に会議があり行くことができない。魚ボラの学生に取りに来てもらおうかと電話をするが、学会が近くみんな忙しく来れないとの事。仕方なくこのまま冷凍を考える。仕事が終わり標本の冷凍作業を行なおうとするが、手頃なサイズとは言え、やはり標本は大きい。どのようにしようかと標本を前に考えていると魚ボラの先生から電話が来る。色々と考えると大学へ往復するだけの時間はある。結局、大学へ持ち込む事にする。そうとなれば急がなければならない。大学のある鹿児島市内は夕方5時を過ぎれば仕事帰りの車で渋滞する。渋滞に巻き込まれれば会議に間に合わない。既に家に帰る時間は無く、作業着姿のまま漁協から直接大学へ向かう。大学に到着後、魚ボラの学生に標本を渡し、あとは任せて帰り、会議も無事間に合う。
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キンセンイシモチ

2009年05月14日 | 定置網
昨日に続き今日も定置網ではテンジクダイ科の魚が多い。昨日の晩に魚ボラで目に焼き付けてきたキンセンイシモチのライン型を探す。今日は昨日に比べるとキンセンイシモチの混ざっている割合が極端に少ない。最初に見つけた個体を手にすると、いきなりライン型である。幸先良かったがその後見つけることはできず、結局ライン型を確保できたのは今日も1個体のみ。比較用にドット型も1個体持ち帰り撮影する。写真上が鰓蓋から腹部にかけての白色縦線が細く実線状だるライン型、写真下がその線が破線状になるドット型である。写真では分かりにくいがライン型の方が体中央の橙黄色縦線の幅が広く、さらに下顎下から腹部にかけて橙黄色であるので色が鮮やかに見える。この両者を調べてみると2003年の魚類学雑誌でミトコンドリアDNAの比較などにより独立した2種であると報告されている。学名はまだ検討中という事で標準和名も与えられていない。という事はどちらかが新種となるのだろう。この白色縦線は固定すると恐らく消えてしまうと思われる。となるとキンセンイシモチのタイプ標本がライン型かドット型か今更分かるのだろうか。ただ、それだけではないとは思うけど。
*キンセンイシモチには2種混同されていましたが遺伝子と形態解析により2種に分かれ、ライン型が本来のキンセンイシモチ、ドット型がスジオイシモチとなりました。
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魚ボラ

2009年05月13日 | 魚ボラ

最近は忙しくなかなか魚ボラに参加できないでいた。そして、今日は予定も無く久しぶりに魚ボラへの参加となる。朝、普段通り定置網漁をし、魚ボラに持ち込む鮮度の良い標本を探す。だが、ネンブツダイやクロホシイシモチなどばかりである。魚ボラの学生がテンジクダイ科魚類の分類を研究していて標本を頼まれていたのでキンセンイシモチを確保する。魚ボラに行き、確保した標本を並べると、自分ではそんなに多いとは思ってもいなかったがキンセンイシモチだけで50個体程確保していた。せっかく持ち込んだので全て標本に登録するとの事。鰭立てしていると学生が1個体だけ違うのに気付く。キンセンイシモチは1種であるが図鑑「黒潮の魚」にはライン型・ドット型と型で分けられていて分類学的な再検討が必要となっている。今回持ち込んだのは1個体だけがライン型で後は全てドット型であった。今まで自分ではこの2型を区別していなかったが、ライン型の標本収集の為に学生に違いを教えてもらう。今回はキンセンイシモチの標本がたくさんあった中でライン型は1個体だけであったが、それが偶々なのか時期的なものなのか、それとも地理的なものなのかなど色々と考えられる。これからは現場で2型を見極め、長期にわたり調べる必要がある。先ずは標本収集からかな。
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メダイ幼魚

2009年05月12日 | 定置網

今日は定置網で選別作業中にメダイの幼魚を見つける。メダイの幼魚は流れ藻につくので、毎年流れ藻が流れてくる時期に獲れる。ところが昨年は1個体も定置網で獲れなかった。流れ藻につくモジャコ(ブリ幼魚)・イシガキダイの幼魚やハナオコゼなどは獲れたのだがこのメダイ・メバル類の幼魚は獲れなかった。メダイの成魚は定置網では漁獲されないが鹿児島では重要魚種である。種子島のメダイ漁をする漁師さんの話を聞くと、やはり昨年はメダイの漁獲量が極端に少なかったそうだ。この流れ藻につく幼魚の量で今年の漁獲量が決まるかもしれない。種子島の漁師さんの為にもたくさんの幼魚に育ってもらいたい。だが、メダイの幼魚は同じ流れ藻につくモジャコ(ブリ幼魚)をよく食べる。その食欲は凄まじく、モジャコ漁で捕られたモジャコの中にメダイの幼魚が混ざっているとモジャコを全て食べ尽くしてしまう事があるほど。メダイは重要であるが我々定置網漁業者としては獲れないメダイよりもブリ(モジャコ)の方が重要である。だが、さらに最近は各地で磯焼けが問題となり、藻場が減っている。当然それに比例して流れ藻も減っている。流れ藻が減ってしまえばそこに隠れるモジャコ・メダイ両方とも減ってしまうのではないだろうか。
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